2023 Fiscal Year Annual Research Report
テロリズム後のフランス・ムスリム移民第二世代のアイデンティティ変容
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20K13679
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
村上 一基 東洋大学, 社会学部, 准教授 (00822420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移民第2世代 / フランス / イスラーム / アイデンティティ / 郊外 / 社会的排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、テロリズムをうけて社会におけるイスラームへのまなざしが変化したことが、日常的に宗教を実践する「過激化していない」ムスリムの若者のアイデンティティに及ぼした影響を明らかにすることを目的としている。研究最終年度は、新型コロナウィルス感染症による渡航制限後に再構築したラポールをもとに、ムスリム移民や第2世代、地域のアクターにインタビュー調査を行った。 現地調査は2023年9月と2024年2月・3月に実施した。まず2023年6月に発生した「暴動」について、自治体やアソシエーション関係者などから当時の状況を振り返ってもらうとともに、移民第2世代の置かれた状況について議論した。そこで、より若い年齢層の人びとが「暴動」に参加したこと、背景に貧困の悪化があること、さらに「暴動」への対応において地域のアクターのネットワークが重要な機能を果たし、被害が抑えられた地域があったことなどが明らかになった。一方で、地域で育った若者が就職や結婚を機に、その地域を出て行ってしまい、社会的なつながりが弱くなり、若年層の急進化が進んでいることが見られた。 ムスリム移民第2世代に対するインタビュー調査では、ムスリムに対する否定的なまなざしが社会全体に広がっていることが生きづらさを感じさせる一方で、彼・彼女らは日常的な実践を変えることはなく、社会からのまなざしが宗教実践を阻むものではないと感じていた。だが、フランスで生きづらさを感じる人びとのなかには、他の国に移住する希望などを持つ者も多く見られた。 自治体や市民団体等のアクターはイスラームについて、重要なテーマであると同時にアプローチの難しい問題だと捉えられている。だが、地域においては、新型コロナウィルス感染症やインフレーションの影響で社会的な困難が広がっており、文化や宗教よりも社会・経済的な状況が喫緊の課題として認識されるようになっていた。
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Research Products
(6 results)