2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13684
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
野村 実 大谷大学, 文学部, 助教 (70823227)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モビリティ / 中山間地域 / 地域公共交通 / MaaS / 官民+市民連携(PPPP) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中山間地域における高齢者等のモビリティ確保策を、先進事例における実践と政策展開から導出することを目的としている。2020年度の研究課題の進捗状況としては、新型コロナウイルスの影響もあり、やや遅れているものの、京都府内の中山間地域を対象として、高齢者の移動手段の確保や地方版MaaS(Mobility as a Service)に関する実地調査を実施した。これらをふまえ、2020年度の研究実績として、次の2点が挙げられる。 1点目は、互助による輸送が与える地域コミュニティへのインパクトである。2020年10月に京都府南丹市美山町で実施した、互助による輸送の利用者へのインタビュー調査を通じて、コロナ禍ではあっても買い物等に関わる移動(手段)は必要不可欠であること、また互助による輸送が友人・知人同士の「集まる場所」としての機能を一定程度、果たしていることがわかった。とりわけ運転免許返納以後の高齢者の移動手段が模索される中で、家族や親族を頼らない形での、地域の公共的な互助輸送の仕組みを構築することは、移動の困難さの解決と交流などの楽しみを生むという2点に帰結しうることがわかっている。 2点目は、地方版MaaSの現状と課題について明らかにしている。2020年11月に実施した、京都府舞鶴市を対象としたインタビュー調査では、主に、同年7月から9月にかけて行ったMaaSの実証実験の概要とプロセスについて尋ねている。MaaSの導入にあたっては、ICTの利活用が目指される一方で、高齢者等に対しては電話予約などの柔軟な対応を行っており、こうした点で地方部でのMaaS活用にあたっては、地域社会や住民個別のニーズを把握していく必要があることがわかった。以上の内容は、国際公共経済学会第9回春季大会でオンラインでの口頭報告を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究課題は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、年度開始の早期に予定していたフィールドワークの実施や所属学会での報告などを断念せざるを得なかったため、やや遅れている。一方で、2020年10月から12月にかけては京都府内や岩手県などで実地調査を行うことができ、オンライン開催による学術学会、研究会などで成果報告を行った。ただし、当初予定していた国際学会への参加や国外でのフィールドワークについては、上記の理由で渡航することができないため、2021年度以降の課題とする。また国内外のカンファレンスがオンラインで実施されている状況を鑑み、こうした機会を活用しながら、MaaSやモビリティ政策関連の情報収集を積極的に行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、引き続き中山間地域のモビリティ確保に取り組むアクターへの実地調査を行い、先進事例から政策的・実践的示唆の提示を試みる。2019年度から全国各地で行われているMaaSの実証実験では、都市部や観光地のみならず、地方部でも展開されているが、こうした地方版MaaSに関する国内の研究や知見はそれほど共有されていない。また近年、制度の見直しなどが行われている自家用有償旅客運送や、互助による輸送についても、中山間地域のモビリティ確保策を構想する上で、非常に重要な役割を果たしうるものと考えられる。そこで、今後の研究においては次の2点の調査研究に取り組む。 1点目は、ICTの利活用による生活支援の方策である。たとえば京都府北部地域では、先の地方版MaaSの実証実験が舞鶴市のほか京丹後市(京都丹後鉄道沿線)で実施されており、同じ京丹後市の丹後町ではスマートフォンアプリのUberを用いた自家用有償旅客運送も展開されている。こうした地域を対象として、ICTの利活用が高齢者の生活支援にいかに資するのか、あるいは新たなサービスを実施する上で生じるデジタル/モビリティの二つの「ディバイド」をどのように解消していくのか、これらに関する調査研究を行う。 2点目は、地方版MaaSや自家用有償旅客運送、互助による輸送などの取り組みへの、地域住民の参画プロセスである。北欧等における過疎地モビリティ確保の文脈でも、既存の公共交通を住民等による送迎が補完しうる可能性が示されているが、自家用車や地域住民という現存資源をどのようなプロセスで活用することができるのか、中山間地域の事例を比較しながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、年度前半に予定していたフィールドワークを行うことができなかった。また、学会報告・参加に関わる交通費については、そのほとんどがオンライン開催となったことを受け、今年度は使用することができなかった。 これらをふまえ、次年度も感染拡大状況を慎重に確認しながら、適切な措置を行った上で、特に京都府内での中山間地域における実地調査を行いたいと考えている。また、国内外の学会についてもオンラインで参加可能な場合は積極的に参加し、情報収集を行う予定である。
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Research Products
(7 results)