2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13684
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野村 実 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (70823227)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | モビリティ / 中山間地域 / 地域公共交通 / MaaS / 官民・市民連携(PPPP) / 自家用有償旅客運送 / 互助輸送 / 交通政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中山間地域における高齢者等のモビリティ確保策を、先進事例における実践と政策展開から導出することを目的としている。2021年度の研究課題の進捗状況としては、全国各地でフィールドワークを実施し、その成果報告を実施してきた。2021年度の研究実績としては、以下の2点が挙げられる。 第1に、地方部のモビリティ政策について、近畿北部地域のケーススタディからインプリケーションの導出を試みている。2021年7月には、京都府京丹後市におけるAIオンデマンド交通"mobi"について、関連アクターである自治体や交通事業者にオンライン・対面を組み合わせてインタビュー調査を実施し、事例形成における官民連携のプロセスを部分的に明示している。2022年1月には、京都府舞鶴市における地方版MaaS"meemo"について、関連アクターである自治体と交通事業者に対面でインタビュー調査を行い、地域主体による住民送迎をどう推進していくべきか、既存の官民・市民連携に関わる理論的側面から考察し、他地域への示唆を導出しようと試みた。 第2に、多様なアクターによるモビリティ確保のプロセスを部分的に解明した。2021年11月には、三重県玉城町「元気バス」を事例として、社会福祉協議会の取り組むフレイル予防と外出支援をテーマにインタビュー調査を実施している。また、同年11月に岩手県陸前高田市の互助交通「支え合い交通」に取り組む住民組織等を対象としてインタビュー調査を実施し、公共交通の補完可能性等を検討し、鉄道やバスでは対応困難な「ラストマイル輸送」や、高齢者等の地域生活を支える買い物支援のあり方を明らかにしている。 以上の研究内容は、国際公共経済学会第36回大会パネルディスカッションや、同学会第10回春季大会シンポジウム、日本福祉介護情報学会第22回大会などで口頭報告を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度前半は新型コロナウイルスの影響を受け、地域調査を断念せざるを得なかったが、年度後半では京都府京丹後市、舞鶴市、三重県玉城町、福岡県大牟田市、岩手県陸前高田市などで、主にモビリティ・地域交通に関わるフィールドワークを実施することができた。また、主に所属学会において調査成果の報告を積極的に行い、調査報告書や論文執筆も行ったほか、ZoomなどのオンラインWeb会議ツールを通じて、各地の実践者との対談や鼎談を行い、交通・モビリティ等の理論的側面のアップデートを図ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、主に以下2点のの調査研究に取り組みたい。 第1に、地方部のモビリティ政策のあり方について、既存の調査事例である近畿北部地域で引き続き調査研究を行いつつ、他地域における動向を把握しながら比較研究を行う。2021年度の研究では、Aapaoja et al.(2017)らの既往研究から特に日本版MaaSを、①営利モデル、②事業者役割拡大モデル、③官民連携モデル、④官民・市民連携モデル、という4類型への分類を試みているが、いずれもわが国におけるMaaS等のモビリティサービスが萌芽的であり、これらの類型に当てはまるかどうかは引き続き検討が必要である。そのため、事例形成のプロセスを詳細に把握しながら、類型化と政策的インプリケーションの導出を図っていきたい。 第2に、1点目とも関わることであるが、さらなる具体事例の蓄積を通じて、PPPP(Public-Private-People Partnership)理論の精緻化を試みたい。近年の地域公共交通・モビリティ政策においては、特に鉄道やバス、タクシーなどの公共交通が希薄な中山間地域や過疎地域において、市民・住民の役割が不可欠なものとなっている。一方でEckhardt et al. (2020)らの提唱する、ルーラル地域における官民・市民連携に関わる理論枠組みは、今後のわが国における地域公共交通・モビリティ政策にも示唆に富むものであり、とりわけ住民参加やプロシューマー(生産消費者)としての市民の役割、さらには官民アクターとの協働の方策を整理することで、アクチュアルな課題解決に寄与していくことが期待される。そのため、先述の地域調査と並行して、PPPP関連の文献や政策文書のサーベイを行い、地方自治体や交通事業者、地域住民等の関連アクターへの提言を行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、 2021年度前半は感染症拡大の影響もあり、当初計画で予定していたフィールドワークなどを行うことができなかった。また、所属学会の大会参加もすべてオンライン開催となったため、学会参加にかかる旅費等を使用しなかった。以上が次年度使用額が生じた理由である。 2022年度は、調査先の地域状況等の詳細を把握しながら、年度前半には東北・北海道地域における地域交通・新たなモビリティ政策関連のフィールドワークを実施予定であり、主にこれにかかる旅費などを使用予定である。また、年度後半には近畿北部地域での数度のフィールドワークを実施予定であり、同様に旅費などを使用予定である。さらに、官民・市民連携(PPPP)に関わるサーベイのため、文献資料の収集を目的とした物品費の使用も予定している。
|
Research Products
(11 results)