2021 Fiscal Year Research-status Report
献血者の贈与と共同性の論理に関する福祉社会学的実証研究
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20K13700
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉武 由彩 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (70758276)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 献血 / 贈与 / 共同性 / 匿名 / 社会的連帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年の献血者数の減少を背景に、献血者における贈与と共同性の論理について実証的に研究することを目的とするものである。さらに、献血行為の実証研究を通して、匿名他者との連帯形成のための要件についても検討することを目的としている。2021年度の研究実績の概要は以下の通りである。 第1に、献血者への聞き取り調査のデータをもとに、どのようにして献血を重ねるようになったのか、家族、学校、職場、地域、友人などの社会関係や集団参加の状況について検討し、生活構造論的な観点から分析を行った。献血者の中でも、とりわけ献血回数が多い人々を調査対象とした。上記の研究成果は、日本社会分析学会第141回例会において、「ボランタリー行為と生活構造分析」(2021年7月24日、25日、広島大学・ハイブリッド開催)として報告を行った。 第2に、献血とは匿名他者への贈与行為であることから、匿名性、贈与、想像力に関する先行研究を整理し、概念的な検討を進めた。ボランタリー行為関連の先行研究だけでなく、広く匿名性等に関する先行研究の整理を行った。そのうえで、本研究における匿名性、贈与、想像力に関する定義を検討、設定した。上記の研究成果は来年度発表を予定している。 第3に、来年度実施予定の量的調査に向けて、既存の量的調査研究の整理と質問項目の検討を行った。検討結果を踏まえて献血やボランタリー行為に関する量的調査を来年度実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はどのようにして献血者になるのか生活構造論的な観点から分析を行い、学会報告を行った。学会報告で得たコメントを受けて研究論文の修正を進め、学会刊行の書籍に掲載される特集へ投稿した。書籍は来年度刊行予定である。また、匿名性、贈与、想像力に関する先行研究を整理し、概念的な検討を進めてきたが、その成果についても来年度公表予定である。上記のように研究を進めており、その成果は今年度だけでなく、来年度も公表予定である。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、第1に、献血者の生活構造の分析を行い、そこから献血をめぐる態度と行為がどのようにして形成されたのかを明らかにし、さらに、匿名他者への贈与の生成過程について検討する。第2に、献血に関する実証研究と匿名性、贈与、想像力に関する概念検討を行った結果について公表を目指す。第3に、献血やボランタリー行為に関する量的調査を実施する。献血に関する既存の量的調査が少ないことから、本研究において実施し、献血の規定要因や献血者の意識構造の分析を行うことを予定している。
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