2022 Fiscal Year Research-status Report
社会調査におけるリサーチ・インクルージョン・アシスタントの可視化と可能性
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20K13703
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
松崎 良美 東洋大学, 社会学部, 助教 (00822157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会調査 / インクルージョン / 情報のアクセシビリティ / リテラシー / 高等教育における情報保障 / フィールドワーク / Learning Criris / 主体性の支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、以下の3点に代表される観点からその足掛かりをつかみ、整理していくことを目指してきた。 第一に、「対象に向き合う際に求められる社会学的理解を備えた支援者の存在」に着目し、障害のある調査者を対象とした質的調査を昨年度から継続して実施した。また、障害者の活動を支える支援者を対象とした質的調査、障害者の活動の参与観察を通じて研究に取り組んできた。くわえて、視覚障害者の同行援護事業に着目し、支援者育成過程で何が配慮されているか、同行援護事業従事者の工夫や考えなどについて参与観察・聞き取りを実施し、既に確立している福祉サービスとの比較を通じて、社会調査などの活動実践において、特に留意すべき点や配慮が必要となりうる点を相対的に検討、整理を進めている。 第二に、「調査に伴って得る多様な学術的情報のアクセシビリティの保障」の観点から 、情報が特定の形態で示されることと情報のアクセスとの関連について検討を進め、Y., Matsuzaki, K., Shibata (2023a)や松崎, 柴田(2023)に成果をまとめることができた。また、より学術的な内容を取り扱う情報に関しては漢字が与える影響が大きいことへの気づきから、その課題を整理し、Matsuzaki, K., Shibata (2023b)に整理している。 第三の「調査者の自立と主体を尊重した支援の実現」の検討を目指し、実践的な取り組みを通じて分析・検討を行ってきた。こちらの成果については、松崎(2022)で着眼するポイントを整理し、Y., Matsuzaki, W., Hamamatasu, S., Egashira, K., Shibata (2023)やY., Matsuzaki (2023)で報告されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①「調査に伴って得る多様な学術的情報のアクセシビリティの保障」、②「対象に向き合う際に求められる社会学的理解を備えた支援者の存在」、③「調査者の自立と主体を尊重した支援の実現」という三つの着眼点を挙げ、それぞれの観点を整理していくことを目指して研究を推進してきたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、調査推進に一部影響を受け、予定を調整する必要性が生じた。結果として、特に①の課題に先行して取り組んできた。2021年度後半より、感染症をめぐる社会状況が寛解してきたことを受け、②や③の観点についても実践的に着手してくることができた。 2021年度後半から2022年度は、オンラインで実施する家庭学習支援の仕組みを構築し、(1)障害のある子どもたちの「学び」という主体的な活動を、大学生や大学院生が支える場、(2)大学生や大学院生の「教える」という主体的活動を、プロジェクトを推進する研究者らが支える場、という“主体性を支援する”実践の場を複数構築し、その参与観察などを通じて、③の課題についても分析を進めてきた。 ②の課題については、2021年度からゆるやかに実施してきた障害者を対象とするインタビューを足掛かりとして、障害のある調査者の活動実践や支援実践の参与観察を継続的に実施してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、本研究として、これまでの調査分析と理論的考察を引き継ぎつつ、まとめを目指していく。特に、「対象に向き合う際に求められる社会学的理解を備えた支援者の存在」や「調査者の自立と主体を尊重した支援の実現」の観点について、追加的にインタビューや参与観察を続けるほか、必要に応じて調査票を配布するなど、補充的な調査を進め、社会調査のインクルージョンを支えるうえで、アシスタント役に求められることや、周囲の環境に必要な配慮や工夫について実証的に整理し、学術報告・論文執筆を通じて、社会に還元していくことを目指す。これまでも、本研究を整理していく過程で、年齢や社会的属性を問わず障害のある人の「学び」や主体的な活動を支えるうえで、本研究で得られた知見がさまざまな形で役立て得る可能性を見出すことができた。幅広い社会貢献につながるような形で成果をまとめていくことを目指したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大を受け、調査推進のスケジュールに変更や調整の必要性が生じた。 次年度は、研究成果をまとめ整理していくことを目指し、補足的に追加調査を行い、研究で得られた知見を国内外の学術学会での報告や論文執筆を中心に取り組んでいく。
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