2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K13705
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石井 由香理 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (90788431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジェンダー / 性別違和 / 社会福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、社会福祉サービスを利用する多様なジェンダーの人々に焦点を当て、彼らの社会的脆弱性の背景を検証した。トランス女性、トランス男性、ノンバイナリー、クロスドレッサーなど、出生時に割り当てられた性別に適合しない人々が、なぜ福祉制度を利用するようになったのかを考え、そのプロセスを概観するために、教育、仕事、家族、移動などの文脈を検証している。2019年から2024年にかけて、東京と大阪で6名の参加者(20歳から60歳)を対象に、1回90分から120分の半構造化インタビューを実施した。調査の実施にあたり、上智大学の倫理審査を受けている。また、そうした活動を支援をしている人からも1名、同様の方法でインタビューをしている。参加者のうち、3名は認定NPO法人自立生活サポートセンターの利用者であった。また、2009年から2020年までに実施された同NPO法人の相談記録から36件のデータを分析している。関西大学の宮田りりぃ氏や、都立大学の結城翼氏との共同調査及び研究でもある。調査の分析から、福祉制度利用をした経験のあるジェンダー多様な対象者のなかには、就労前の段階で、学校教育制度において高度な教育を受ける機会が制限された人たちがいた。また、就業先や、福祉制度のサービスの中にシスジェンダーや性別二元があると、就業が続けられなかったり、不快な思いをしたり、利用を継続できないといった、困難性が増すことがわかった。それは、人々をさらに不安定な生活状況に追いやる動力になる。また、出生時に割り当てられた性別が女性であるトランス男性やノンバイナリーパーソンの困難さについては、より可視化されにくいため、注視が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
台風のために予定していた調査ができなかったなど、機会が限られたりしたため、調査人数がもう少し増えてもよかったという認識である。ただ、調査対象者より、興味深い話を聞くことはできており、また大阪に関しては前の科研費調査と重なる部分で新たに知ることのできた側面などもあり、学会報告や論文として共有できればと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象者の数を少し増やすことと、これまでに得た知見をまとめて、社会福祉サービスを利用する多様なジェンダーの人々についての研究結果を、学会報告や論文にまとめて投稿していきたい。可能であれば、行政へも簡易調査を行って、クィアの人々に対してどのような支援を行っているかの実態把握を行いたい。
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Causes of Carryover |
国際学会への渡航などがなかったため。2024年度はThe 2nd International Transgender Studies Conference(Northwestern University, 2024年9月4日~7日開催)に参加予定である。
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