2023 Fiscal Year Research-status Report
里親・養子縁組におけるソーシャルワーク-イギリスの実践から学ぶ-
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20K13728
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
山口 敬子 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (60772176)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 里親 / ソーシャルワーク / こども家庭福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は主に、日本とイングランドにおける、フォスタリング・アセスメントの比較検討を行った。 日本の場合、認定時アセスメントに関するガイドラインや手引き等はなく、また、アセスメントを行う人がソーシャルワーカーであるとは限らないのが現状である。イングランドのすべての里親登録希望者は、ソーシャルワーカーによる家庭訪問、身元調査、推薦状の提出、初期トレーニングの受講といったプロセスを経て里親認定審査に進んでいく。イングランドの場合、これらを一連の里親認定アセスメントとしてとらえており、通常6~8ヶ月ほどかけて進めていくプロセスとなっている。 日本では、適切なアセスメントに基づいた丁寧なマッチングが行われないまま委託が開されることで養育がうまくいかず、いわゆる「不調」になることがあったり、さらにその「不調」を防ぐためにますます委託に慎重になる、という負の循環も起こっている。こういった問題の要因は1つではなく、複雑に問題が絡んでいると思われ、制度見直しを含め、フォスタリング・ソーシャルワークの過程の包括的な取り組みが必要であるといえる。 また、日本とイングランドとの比較検討として、ニュージーランドおよびオーストラリアの里親支援について実地調査を行った。ニュージーランドでは、wrap around型の支援を行っている機関等を訪問した。また、オーストラリアでは、母体がイギリスにある里親支援機関等を訪問し、オーストラリアとイングランドの相違点等について実践者の見解を聴くことができた。オーストラリアは、イギリスから憲法や法律の影響を受けているが、家族法や児童福祉法に関しては、イギリスと大きく異なっているという。そのため、親責任や親権に関する考え方もイングランドと異なっているという。さらに、両国とも、多様な文化的背景に配慮した支援を重視しており、多様な取り組みが行われていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、ウクライナ侵攻の影響により本来実施予定であったイギリスの里親機関のソーシャルワーカーへのインタビュー調査等が実施できなかったため、イギリスおよび日本との比較として、オーストラリアにおける里親委託ソーシャルワークに関する実地調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査に関しては、イギリス政府やcoramBAAFが発行している資料をもとに、フォスタリング・ソーシャルワークを行ううえでの、日本の実践への示唆を得たいと考えている。 また、今年度も状況が改善次第、調査の実施について調整を行っていく予定である。今年度も実地調査が困難であった場合は、昨年度からの継続調査として、オーストラリアにおけるフォスタリング・ソーシャルワークについての調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画期間(2020年度~2022年度)のうちに実施を予定していたイギリスでの実地調査がCOVID-19の影響等により実施できなかったため、調査に係る物品費や旅費、人件費 の支出が発生せず、前年度に引き続き次年度使用額が生じる結果となった。 次年度使用額の使途についてであるが、今年度実施予定の実地調査において使用ものとする。
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