2020 Fiscal Year Research-status Report
「階級」関係から検討する貧困理解および貧困対策に関する研究
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20K13729
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
志賀 信夫 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (70772185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貧困問題 / 社会的排除 / 社会的包摂 / 階級 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、「階級関係」とはそもそもどのような関係なのかということを追究するとともに、そこから得られた知見に基づいて貧困理論の再検討を行った。その結果、当該テーマに関係する書籍の刊行、論文投稿・掲載(査読付)という成果を提示することができた。特に、日本社会福祉学会への投稿論文「階級関係から問う貧困問題」は、これまでにほとんど論じられてこなかった知見を提示できたと考えている。当該論文において提示できたこれまでになかった知見とは、以下の点である。 ①いわゆる「絶対的貧困」概念を提示したチャールズ・ブースに対する先行研究による評価が過大評価であるということ。つまり、無批判にブースの貧困研究を踏襲するということはできないという結論がここから導出できる。 ②「資本-賃労働関係(=階級関係)」、貧困が自己責任の問題ではなく階級のあいだの社会関係の問題である。「脱貧困」を目標とする貧困対策のなかにはともすれば、社会ではなく個人が変わるべきであるという自己責任の論理が内在しているが、そのような見解に科学的妥当性がないことがここから導出できる。 当該年度においては、日本で刊行された文献を中心に蒐集し、研究を遂行したが、次年度(2021年度)においては英語文献を中心に蒐集する予定である。コロナ禍のため渡英しての資料蒐集ができない可能性がある分、国内の貧困問題に関する具体的事例を調査しつつ、理論的彫琢を目指していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該テーマにおける理論的彫琢はおおむね順調に進展している。 ただし、申請時当初は予期していなかった新型コロナウィルス感染拡大によって、日本の各種の研究会への出席と十分な情報交換はかなわなかった。さらに今後は渡英しての調査と資料蒐集が困難となるだろうことが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症拡大という状況があり、2021年度に予定していた渡英しての資料蒐集については困難となることが予想される。また、2020年度に引き続いて研究会は基本的にオンラインとなる可能性が高い。 したがって、資料蒐集については日本での情報収集とこれに基づく海外からの資料蒐集に集中せざるをえない(すなわち、渡英しない)ことも考慮にいれて研究を進めていく。また、オンライン研究会だけで可能なものについては継続するが、日本国内の反貧困の実践活動等に関する調査について感染対策を講じたうえで積極的に行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、当初予定していた研究会等、ほとんどが中止となった。 次年度(2021年度)は、渡英する予定であり(困難は予想される)、資料蒐集と現地における調査等を行う予定である。また、渡英が困難となった場合、国内における情報収集活動等に集中し、できるだけ反貧困の実践活動をおこなっている現場を視察し、貧困理論の彫琢を試みる予定である。 また、日本国内からイギリスの文献や資料を蒐集するため、当初よりも郵送費が高額になることも予想される。
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[Book] 福祉再考2020
Author(s)
田中 聡子・志賀 信夫
Total Pages
224
Publisher
旬報社
ISBN
9784845116621