2020 Fiscal Year Research-status Report
低所得者に対する成年後見支援のあり方-公的後見制度の導入可能性-
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20K13730
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
西森 利樹 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (30795860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成年後見 / 低所得者 / 公的後見制度 / アメリカ公的後見制度 / 権利擁護 / 社会福祉 / 社会保障法 / 高齢者福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的であるアメリカ公的後見制度の研究を通じ日本において公的後見制度を導入する際の検証課題を明らかにするため、アメリカ公的後見制度の近年の改正動向を検討した。その結果、2013年から2019年までの間に改正等をした州は全体で24州であり、制度運用に歴史のある州が改正をするものの他、新たに公的後見制度を導入した州もある。各州の具体的な改正としては、申立て手続、受任件数の比率、提供体制、財政上の問題等がある。 本研究の主テーマである提供体制に関しては、ネブラスカ州が2014年に公的後見制度を新たに導入した際、公的後見の部局を裁判所内に設置した。2017年に改正したコロラド州もまた、公的後見部局を司法府内に設置した。公的後見の提供体制は①裁判所モデル②独立機関モデル③社会福祉機関モデル④郡モデルの4つに分類されているが、③の社会福祉機関モデルが利益相反の恐れ等の批判を受けながらも最も多くの州で採用されている。そうしたなかでネブラスカ州やコロラド州が裁判所モデルを採用した点は興味深く、この動向が明らかになったことには意義がある。 財政上の問題に関しては、税金を中心に州や裁判所等の予算を財源とするものもある一方で助成金や基金の設立等により対応しようとしている州がある点が特徴的であるといえよう。例えば、2013年ニューメキシコ州法は州庫に後見基金を設立している。2018年のフロリダ州改正法では、公的後見制度の財政基盤を支えるために2005年に設立された貧困者後見財団について廃止規定を削除し、今後も同財団による財政的な確保を図っていくこととした。また、20117年のコロラド州改正法は基金を設立し、税金を投入せずに寄付、助成金、贈与によって費用を賄おうとしている。これらは税金以外の資金を調達することによって公的後見制度を運用しようとするものであり、日本の課題を検討する上で示唆に富む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大により国内外の出張が困難となったことにくわえ、感染拡大防止の対応が緊急かつ継続的に求められたことにより、当初予定した研究活動を遂行することに困難が伴った。しかし、国内において収集及び検討が可能であった文献の検討については行うことができ、公的後見制度の提供体制や財源確保のあり方を今後さらに検討をする上で必要な改正動向などを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ各州の改正動向においても明らかになったように、公的後見制度の提供体制がどうあるべきかに関する検討は今後もさらに必要になる。社会福祉機関モデルが主流であるなかで近年改正等をしたネブラスカ州やコロラド州が裁判所モデルを採用した点は興味深く、両州が公的後見制度の改正や制定の前にどのような経緯を経て裁判所モデルを採用するに至ったのか、各制度の具体的内容の詳細と立法過程などを中心として掘り下げた検討を進めたい。 また、あるべき提供体制の検討には、財源確保のあり方の検討が重要であると考えられる。そのため、各州がどのようにして財源を確保しているのか、特に、フロリダ州における公的後見制度の財源確保のあり方などを検討する予定である。 研究実施にあたっては、国内外の文献の収集と精査を続けるほか、新型コロロなウィルスの感染拡大の状況等を見極めつつ国内外の出張を伴う研究活動の可否について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルスの感染拡大との関係で国内外の出張が中止になった。旅費の予定としていた費用の一部は文献収集のために使用したものの、予定額を使用できなかった。次年度は、感染拡大状況などを見極めつつ資料購入や国内外の出張などを含めいただいた科研費を大切に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)