2021 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者におけるリカバリーと生活の困難さの関連に基づく生活支援システムの構築
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20K13733
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
川口 敬之 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部, リサーチフェロー (50622768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リカバリー / 精神障害 / 生活の困難さ / 生活支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,精神障がい当事者を対象とし,リカバリープロセスと生活の困難さの縦断的調査に基づく構造的関係性を踏まえた生活支援システムを構築することである. 2020年度調査により,潜在曲線モデルに基づくリカバリープロセスと生活の困難さの構造的関係性が推定されたが,精神障がい当事者が抱える生活の困難さと困難さの主観的な「要因」を低減する支援の具体的方策について明示することが課題として挙がった. 2021年度は,精神障がい当事者,専門職,研究者の立場の研究協力者とのパネル会議のもと,生活支援システムの構築を行うこととした.パネル会議では,生活支援システムの初期段階において,対象者と専門職との関係構築プロセスの重要性が強調され,関係構築における要素を抽出する必要性が申し合わされた.また,関係構築プロセスにおいて,ピアサポートを専門とする職員(ピアスタッフ)の視点の重要性についても共有された.そのため,生活支援システム作成の参考情報を得るために,研究協力者とともに,精神障がい当事者,ピアスタッフ,専門職(看護師,精神保健福祉士,作業療法士)を対象としたグループインタビューを実施し,関係構築プロセスに重要とされる要素について聴取し,質的に分析した.その結果,精神障がい当事者を対象とした逐語データからは,専門職の関わりに対する「エンパワメント」,「専門的知識・スキル」,「開かれた/共感的な態度」,「立場性に則した対応」,「個人特性」の5つのテーマが抽出された.これにより,生活の困難さや困難さの主観的な「要因」に対する支援の展開のために,専門職は5つのテーマに即した関わりを行うことが重要であることが示唆された. 現在,ピアスタッフおよび専門職の逐語データの分析を行うことで,当事者と専門職の双方向の関係構築プロセスに必要な要素を抽出し,パネル会議に基づき生活支援システム作成を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
リカバリープロセスと生活の困難さの構造的関係性の結果を踏まえ,リカバリー志向型生活支援システムを作成することが2021年度の計画であった.これに対し,コロナウィルスまん延に伴い,リカバリーの知識を有する当事者や専門職,研究者の立場の研究協力者によるパネル会議が,対面ではなく,オンラインでの実施が余儀なくされた.また,パネル会議を通じて,関係構築プロセスに必要な要素を抽出するためのインタビュー調査を実施したが,質的分析を進めるにあたり,研究協力者によるオンラインでの精査には制約があり,遂行に遅れが生じていた.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は生活支援システムの構築,ならびにシステム実施による効果検証を行い,生活支援システムの有用性を評価する予定である.そのために,リカバリーと生活の困難さの構造的関係性を詳細に分析し,パネル会議の実施をもとに生活支援システムを構築していく.
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Causes of Carryover |
パネル会議における生活支援システム構築のための参考情報を得るために,インタビュー調査を実施した.申請段階から生活支援システムの定性的検討が計画されていたため,予定していた使途であったが,多様な立場の視点を取り入れるべく調査対象を拡大したため,質的分析に係る支出が生じた.また,コロナウィルスまん延により,前年度と同様に,物品費や学会発表のための旅費については,計画通りの使用に至らなかった.次年度は計画通り使用し,研究を遂行する.
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