2023 Fiscal Year Research-status Report
「当事者事業所」という新たな生存保障システムの考察 ――福祉経営論の視点から
Project/Area Number |
20K13734
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
天畠 大輔 中央大学, 社会科学研究所, 客員研究員 (80866947)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重度訪問介護 / 介助付き就労 / 就労支援特別事業 / 重度身体障がい者 / 自薦ヘルパー / 当事者事業所 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は2022年に出版した『しゃべれない生き方とは何か』(生活書院)が社会福祉学会奨励賞を受賞し、本研究が一定の評価を得たことに安堵したのと同時に、研究価値を再認識するに至った。 本研究は立命館大学立岩真也教授(2023年没)の指導の賜物であり、その立岩先生が生涯をかけて取りくまれた生存学の発展に、本研究の成果を還元していくべきという考えから、生存学研究センターとのネットワーク構築に力を注いだ。特に、重度障がい者の生存保障という観点から、2019年京都ALS嘱託殺人事件の裁判経過のフォローや、「安楽死」に関するメディア調査を行った。 当事者事業所に関しては、当事者3名とサービス提供責任者2名に対して調査を実施し、以下の点が明らかとなった。①24時間介助が必要な重度障がい者が地域で一人暮らしをするにあたっての調整コストの大きさ②その調整コストをサービス提供責任者に分散できるかで、当事者の負担が大きく変わる③その負担は当事者の生きる気力を奪うこともあるほど大きい。特に、発話障がいなどにより、明確に指示を出すことが難しい当事者にとってこの問題は、より切実である。 インタビューに並行してバリアフリー調査も実施した。調整コストの内には、介助を伴う外出における交通費(介助者分の負担が生じる)やバリア(物理的バリア、心理的バリア)の存在も挙げられる。依然、あらゆる方向から障がい者を内に閉じ込める力が社会的に残っていることが浮き彫りとなった。 生存保障の一端を担う、障がい者就労については一般社団法人「わをん」の研究プロジェクト、「24時間介助が必要な重度身体障がい者の就労にむけた実現戦略――介助付き就労を阻む社会システムの合理性を運動論から問いなおす」と協働する形で『介助付き就労学習会』の実施や『介助付き就労実態調査報告書』の刊行に参画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
引き続き、参議院議員としての議員活動と並行しての研究活動であったため、十分な時間を研究にあてることは難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も生存学、障害学の観点から、当事者事業所という装置を活用した重度障がい者の生存保障について研究を継続する。 自立生活の鍵を握る、サービス提供責任者の存在について、考察を深めるためにインタビュー調査を実施する。 さらに自立生活を阻むものの一つとして移動のバリアにより着目して調査研究を続ける。
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Causes of Carryover |
2022年度途中から参議院議員としての活動が発生し、当事者研究として調査・考察が進展した側面もあったが、全体として研究に割く時間が充分に取れず、1年延期しての研究計画とした。2024年度の間に当事者事業所調査、バリアフリー調査などに研究費を活用する。
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[Book] 障害学の展開2024
Author(s)
障害学会20周年記念事業実行委員会
Total Pages
496
Publisher
障害学会
ISBN
978-4-7503-5721-8