2021 Fiscal Year Research-status Report
労働中心社会における開発的な地域福祉実践モデル構築のための理論的・実証的研究
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20K13735
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
竹内 友章 東海大学, 健康学部, 助教 (60755825)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コミュニティワーク / 地域福祉 / 社会的企業 / 自治型地域福祉 / 社会的連帯経済 / 協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、1)文献研究として地域福祉における社会的企業研究の動向に関する整理、および地域で福祉実践をおこなう「ワーカーズコープ登米地域福祉事業所(宮城県登米市)」「永源寺診療所(滋賀県東近江市)」での事例研究をおこなった。 文献研究においては、論者によって「社会的企業」の定義や文脈が異なることを前提に、スコーピングレビューを実施した。 地域福祉領域における社会的企業は、福祉の準市場化や地域福祉の政策化によって福祉NPOの領域の拡大の中、ボランタリーな市民組織が、自律性を失い行政の補完的な役割となっている現状を問題意識としている。「自律性/先駆性/開発性」をキーワードに「公私関係の問い直し」「当事者/住民との対等の関係」「労働/経済活動」「多様な主体の参加/組織化」に注目しながら、社会変革を目指すことが共通点として挙げることができた。 そのために、「自治」や「公的責任」を問うというソーシャルアクションの要素を含んだ開発的実践としての社会起業(家)を位置付けていること、「市場化」や「民営化」ではなく、生活主体から「経済的なるもの」の問い直しを行う視点を含むこと、地域福祉研究における「場づくり」を組織所有、地域関係の再構築、学習の場、組織の持続性、地域の社会資源開発を考察するものであることが明らかになった。 事例研究では、協働の視点から自治の高まり、ネットワークの拡大の2つを検討した。自治の高まりには、①生活困窮者自立支援事業と林業など事業の組み合わせによる参加の拡大、②事業プロセスへの共感、③事業に地域再生や就労支援など複数の目的を含意させることが重要であること。ネットワークの拡大には、①専門性の違いによるキーパーソンやプレイヤーの理解のズレの認識、②協働する人たち同士の「情報と意味のズレ」への注目、③関わり方のズレを尊重が重要であることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年3月から8月まで育児休業を取得したため年度の前半は研究を行うことができなかった。また、新型コロナウイルスの感染拡大の収束の見込みがつかずフィールド調査にいくことができなかった。そのためオンラインでのヒアリングにとどまりアクションリサーチを実施することができていない。 文献研究を中心におこなってきたがリサーチクエスチョンの精緻化をすることができている。とくに社会的企業と地域福祉をつなぐ概念として「社会的連帯経済」に注目することができた。社会課題の解決だけではなく「自治」や「マルチステークホルダー」の再検討という示唆を得た。 2022年度は感染症の状況を見ながらフィールド調査の実施をするための準備と調整を行っている。引き続き社会状況を見ながら、理論研究を重点的におこなうことになる可能性はあるが、オンラインを活用して研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、新型コロナウイルスの感染状況をみながらフィールド調査を実施する。先述した通り受け入れ先との調整はすでに済ませているため、現地に負担のかからない時期に再訪し、調査等の実施を行う。それまではオンライン調査を進めていく。 また、2021年度の文献研究により「社会的連帯経済」という視座を得た。国内においてそれらの研究は黎明期であるため海外の先行研究の文献収集、事例の収集と整理を進めていく。 21年度の研究成果を報告するために6月に開催される地域福祉学会にエントリー済みである。それらの研究も含めて可能な限り査読の有無にかかわらず論文投稿し、社会への発信に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、21年度も引き続きフィールドワークの実施が困難な状況が続いた。フィールド調査はオンラインに切り替えるなどして実施をしている。 オンライン調査は基礎的な情報収集が限界となるために、文献収集など資料の集約をすることによって補っている。22年度は現状、フィールドワークの実施が可能となる見込みのため、過去2年間の基礎調査をもとに精度の高い研究を行いたい。 また、当初3年で計画をしていた研究を4年間と変更することも想定しいる。
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Research Products
(6 results)