2022 Fiscal Year Research-status Report
障害のある性暴力被害者への相談支援に関わるソーシャルワーク支援の研究
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20K13736
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
岩田 千亜紀 法政大学, 現代福祉学部, 助教 (40801478)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障害のある性暴力被害者 / 相談支援 / アンケート調査 / 2次被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果について、NPO法人主催の勉強会(2022年8月開催)や、日本社会福祉学会第70回秋季大会(2022年10月開催)などで発表を行った。 さらに、令和3年度に変更した研究計画に基づき、国内における障害のある人たちへの性暴力被害の実態と相談支援の状況を明らかにすることを目的に、障害のある性暴力被害者を対象としたWEBアンケート調査を実施した(2023年3月)。本アンケートへの回答者は60名であり、障害種別としては、発達障害(56.7%)、精神障害(52.3%)、身体障害(25%)、知的障害(8.3%)、その他(1.7%)であった(重複障害あり)。また、性暴力被害の経験については、回答者の83.3%に性暴力被害の経験があった。被害内容については、同意のないボディタッチが82.4%と最も多く、同意のない性交も43.1%に上った(複数回答あり)。また、被害を相談したことで、被害後の回復に役立ったかという質問では、「役に立たなかった」という回答が35.7%と最多であった。その理由として、被害を相談することによって、2次被害を受けたことなどが挙げられた。また、被害を相談した際に、障害があることによって困難だと感じたことについては、「加害者の容姿を説明できず、被害届を出せなかった」(視覚障害)、「抗拒不能の証明と事実の証明ができなかった」(知的障害・発達障害)などの回答があった。さらに、障害者が性暴力被害に遭いやすいという実態について感じることなどについては、「証拠、証明ができなくて、泣き寝入りになってしまわないように相談窓口をしっかり設置してほしい」などの回答があった。 本調査は、国内における障害のある性暴力被害者を対象とした調査としては、初の包括的調査である。今後、さらに分析を進め、研究結果について広く公表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に実施した「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを対象としたアンケート調査」の結果については、2023年度に論文として日本社会福祉学会の学会誌に掲載されることが決まっている。 なお、2021年度に変更した2022度の研究計画では、国内における障害のある性暴力被害者および被害者家族へのインタビュー調査を計画していた。しかし、対面でのインタビュー調査による性暴力被害者への侵襲性、さらには障害およびコロナウィルス感染への配慮の必要性から、インタビュー調査ではなく、WEBアンケート調査に方法を変更した。研究計画通り、アンケート調査を2022年度内に終えることができた。2023年度については、調査結果の分析および論文執筆、学会発表等を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度については、2022年度に実施した国内における障害のある性暴力被害者へのアンケート調査の結果についての分析を進め、日本社会福祉学会の学会誌への論文投稿、同学会での学会発表等を行う予定である。それらの研究成果の発表を通じて、障害のある性暴力被害当事者、相談機関などの支援関係者、メディアなどに、広く問題の周知を図り、問題の改善に繋げていきたい。
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Causes of Carryover |
差額が生じた理由の一つは、コロナウィルス感染拡大のため、海外での学会発表などへの参加や調査ができなくなったことにより、海外渡航費などを支出できなかったことである。さらに、もう一つの理由は、コロナウィルス感染などの影響を踏まえ、性暴力被害者への調査方法を当初計画のインタビュー調査からアンケート調査に変更したことが挙げられる。アンケート調査に変更したことによって、インタビュー調査で見積もっていた旅費や文字起こしのための費用の支出が必要なくなったため、差額が生じた。 今後の助成金の使用計画としては、学会発表や研究成果の発表のための交通費等に充当していきたい。
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