2021 Fiscal Year Research-status Report
公的扶助と教育政策――生活保護制度における大学等就学支援に着目して
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20K13738
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
三宅 雄大 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20823230)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生活保護制度 / 世帯分離就学 / 世帯内就学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生活保護世帯における大学等就学を「いかに」支援するべきか、その在り方を検討するものである。より具体的には、(1)生活保護制度において大学等への世帯分離就学が正当化される論理の析出、ならびに、(2)生活保護制度と教育政策(奨学金、授業料等の減免)をいかに組み合わせ設計すべきかを検討する。 本年度は、上記目的の(1)に関して、2021年度の学会報告(「生活保護制度において大学等「世帯分離就学」が正当化される論理―「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」の議事録を通じて」;日本社会福祉学会・第68回秋季大会)の内容を精緻化し、査読論文として投稿し、掲載された。 また、以上と関連して、現行の生活保護制度の目的である最低生活保障と自立助長を時制(過去・現在・未来)の観点から整理し、①最低生活保障という目的が過去・現在時制に照準する一方、自立助長は未来時制における未完の「自立」に照準していること;そして、②生活保護世帯からの大学等就学が(不確実性の高い)未来時制の「自立」に資すると認められ、かつ、現在時制の最低生活保障を停止する限りで認められていることを析出した。こ結果は、一般誌の論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先に示した通り、本研究の目的のうち「(1)生活保護制度において大学等への世帯分離就学が正当化される論理の析出」を行い査読論文として発表し、あわせて、現行生活保護制度における大学等就学に係る運用(自立助長を理由に最低生活保障を停止)の問題点を指摘する論文を発表できたことが挙げられる。 しかしながら他方で、「(2)生活保護制度と教育政策(奨学金、授業料等の減免)をいかに組み合わせ設計すべきかを検討する」ことに関しては、やや分析作業が遅れており、海外研究(対象:スコットランド)に関する資料を収集するにとどまっている。 以上の理由から「(3)やや遅れている。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は、これまでの研究成果を踏まえつつ、「(2)生活保護制度と教育政策(奨学金、授業料等の減免)をいかに組み合わせ設計すべきかを検討する」ことに注力する。具体的には、英国(特にスコットランド)における公的扶助(社会扶助)と、高等教育に関する政策・制度(奨学金、授業料減免等)の設計・布置(相互のすみ分け)を文献研究を通じて検討し、日本における公的扶助(社会扶助)と教育政策の在り方に対する示唆を得たい。分析結果は、所属学会における学会報告や論文といった形で発表していくことを考えている。 なお、当初の予定では、英国(スコットランド)の訪問・関連する研究者へのインタビューを予定していたが、COVID-19に関わる情勢によって、中止または延期する可能性がある。
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Causes of Carryover |
当初、学会報告参加の費用(交通費、宿泊費等)を一部計上していたが、COVID-19の影響により学会がすべてオンラインでの開催となったため余剰が発生した。今回発生した次年度使用額は、2022年度の文献研究に用いる資料購入、ならびに、学会参加費(申請者の所属する学会はいずれも対面実施を予定)に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)