2022 Fiscal Year Research-status Report
中学生の学習支援を目的とした子ども食堂の効果検証と普及に向けたモデルの構築
Project/Area Number |
20K13740
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
池田 晋平 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (90764936)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子ども食堂 / 学習支援 / 中学生 / 参加型アクションリサーチ / 居場所作り / 子どもの貧困 / ロジックモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,中学生を利用対象とした学習支援を目的とする「子ども食堂」(以下,本事業)に対し,参加型アクションリサーチ(以下,PAR)の手法で評価を加え,2022年度は短期効果を検証することが主旨であった.2021年度まで本事業は新型コロナウイルス感染拡大にて活動を自粛してきたが,その自粛が本事業に関わる中学生や保護者,地域高齢者等へどのような影響を及ぼすのか,倫理面から既存資料・データの分析から議論してきた.そのこともあり今年度は感染対策に万全を期し,6月・11月・2月の計3回開催した.6月は申し込み者4名で利用回数のべ26回,11月は申し込み者8名で利用回数のべ49回,2月は申し込み者5名で利用回数のべ31回であった.各回リピーターが含まれ,申し込み人数に関わらず地域で中学生の学習支援や食事提供を行う必要性を改めて認識した. 本事業はプログラムの設計・開発段階であるため,今年度はプログラムの形成的評価を実施した.効果検証に際し,本事業を「ロジックモデル」で見える化した.PARは現場の人たちと共に民主的な活動を重視するため,中学生にとって現状の学習支援プログラムが有効に機能しているのかという問いで質問紙調査を実施した. 11月の利用者を対象にした研究では,塾に通っておらず,自宅に落ち着いて勉強できる環境がない中学生が多く利用しており,本事業がターゲットとしている層の中学生が利用していることが明らかになった.多数の中学生から今後の利用意向が聞かれ,本事業は中学生やその家庭のニーズに応えていることが示唆された.また,勉強に集中できかつ勉強が捗ったという意見が聞かれ,大学生の学習サポートや食事の量・味についても満足が得られた.これらの結果から,ロジックモデルの投入から直接アウトカムは,概ね肯定的な評価が得られた.この研究成果は2023年10月の「第10回日本予防理学療法学会学術大会」にて公表する予定で,詳細な検討を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は形成的評価を実施し,直接アウトカムまでの短期効果の検証には着手できたが,長期効果としての総括的評価の実施には至らなかった.総括的評価はプログラムの介入後に行うもので,現時点で本事業はプログラムの設計・開発段階であるため,総括的評価は時期尚早であった. 進捗が遅れている理由は,やはり2021年度まで本事業を自粛してきた影響が大きい.その背景にあるのは,2020年度の新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言・まん延防止等重点措置による制約である.今年度検証してきたように,外出自粛による人々の行動制限は社会生活やメンタルヘルスに少なからず影響を及ぼしている. 2023年度については,引き続き感染対策に留意しながら本事業を継続・発展させたい.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,以下の方針で本研究を進める.
1.2021年度に取り組んだ,ステークホルダーとのワークショップをもとに主に教育現場における子どもの貧困の実態や地域で子ども達を支えるために何ができるかについて,質的分析を継続し,その研究成果を学術集会等で報告する. 2.2022年度に取り組んた,ステークホルダーである中学生を対象にした形成的評価の調査結果を分析し,その研究成果を学術集会等で報告する. 3.PARとして,当初計画していた通り,本事業に対し適宜プロセス評価を加え,短期・長期効果を検証し,プログラムの見直しを図る.
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Causes of Carryover |
今年度の未使用額は761,942円であったものの,研究の進捗を踏まえると予算執行は概ね予定通りであった.未使用額が生じた理由として,本事業の評価が量的な形成的評価に留まり総括的評価まで及ばず,また本事業の他地区への立ち上げ支援まで至らなかったため,ステークホルダーを対象にしたワークショップ開催や打ち合わせ会議の費用(主に物品費,旅費,人件費・謝金)を執行できなかったことが大きい. 次年度については,①年間3回の本事業の実施,②ステークホルダーを対象にしたワークショップの開催,③本事業の波及可能性として他地区への立ち上げ支援,④研究成果の公表の4点において,物品費,人件費・謝金,学会参加費・旅費,論文掲載に向けた予算を執行する予定である.
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