2020 Fiscal Year Research-status Report
都市における高齢者の被援助志向性および優れた高齢者支援の在り方に関する総合的研究
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20K13757
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
高橋 知也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90813098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 被援助志向性 / 援助要請 / 援助拒否 / 高齢者支援 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)高齢者支援の好事例に焦点を当て、高齢者を必要な支援に結び付けるために有効な取り組みに関する質的検討を行うとともに、(2)「客観的にみれば必要と考えられる援助やサービス」を当事者たる高齢者自らが拒否する、いわゆる高齢者の援助拒否に焦点を当てた量的・質的検討を行うことで、「『客観的にみて必要な支援』を受け容れない高齢者をいかに支援に繋げるか」という問いに正対することを目的としている。 (1)については、東京都内における行政・NPO法人・社会福祉協議会およびその連携先(社会福祉法人など)において高齢者就労支援に取り組んでいる担当者(12拠点28名)へのインタビュー内容について定性的手法(TEMおよびSCAT)を用いて分析を行った。その結果、就労支援者による来所者への声掛けや励ましといった関わり方や姿勢といった接遇が、就労支援の継続やその後の採否に影響を及ぼす可能性が示された。 (2)については、2020年度に予定していた大規模調査が新型コロナウイルスの影響を受けて2021年度に順延されたため、2020年2月に地域高齢者を対象とした調査を通じて得られた中規模量的データ(N=280)を用いて、高齢者の援助要請スタイルに関する分析を行った。その結果、学歴の高い高齢者は自身で適切な援助要請の時機や相手を決定する傾向にあることや、若齢の高齢者は過剰に援助を要請する傾向にある一方、年長の高齢者は援助要請を回避する傾向にあることが示唆された。この知見は、2021年度に実施予定の大規模調査における調査項目選定への活用を検討している。 なお本研究成果の一部については、筆頭および共同発表者として学会での発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルスの流行により、高齢者支援を主たる業務とする施設への立ち入りに対する制約や大規模調査の実施順延などの影響を受けた。2021年5月現在もその影響は継続しているが、引き続き下記の通り研究に取り組む。 (1)高齢者支援の好事例の収集は、東京都内の高齢者就労支援事業の担当者のほか、養護老人ホームの運営者へのインタビューの形で既に実施しており、引き続き高齢者に対する接遇のあり方などについての質的分析を行っていく。 (2)2020年度に実施を予定していた大都市部における質問紙調査は、新型コロナウイルスの影響により2021年度に順延するとともに、自治体や他の研究者との共同で行う予定である。現在も当該調査の実施に向けた準備を進めており、年度内に調査を完了、データ解析が可能となる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、社会調査の実施に対する新型コロナウイルス流行の影響は大きく、当初の研究予定からの変更を余儀なくされるなどの制約が生じている。 他方、過去の調査で取得した本研究課題に関連する調査データの分析など、代替手段による補完を行うことで研究を進めることができている。
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Causes of Carryover |
2020年度に実施を予定していた大規模量的調査が新型コロナウイルスによる影響を受けて2021年度に順延されたため、当該調査のために計上していた予算がそのまま次年度使用額として繰り越される形となっている。2021年度の大規模量的調査は現在も実施に向けた準備が進んでおり、大きな社会状況の変化が無い限り、調査実施のための費用として使用する計画である。
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