2021 Fiscal Year Research-status Report
都市における高齢者の被援助志向性および優れた高齢者支援の在り方に関する総合的研究
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20K13757
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
高橋 知也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90813098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 被援助志向性 / 援助要請 / 支援ニーズ / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)高齢者支援の好事例に焦点を当て、高齢者を必要な支援に結び付けるために有効な取り組みに関する質的検討を行うとともに、(2)「客観的にみれば必要と考えられる援助やサービス」を当事者たる高齢者自らが拒否する、いわゆる高齢者の援助拒否に焦点を当てた量的・質的検討を行うことで、「『客観的にみて必要な支援』を受け容れない高齢者をいかに支援に繋げるか」という問いに正対することを目的としている。
2021年度は上記のうち(2)に関する検討を行うため、新型コロナウイルスの影響を受けて2020年度より順延となっていた大規模調査を実施した。2021年10月に、同年9月1日時点において東京都豊島区に在住する65歳以上の高齢者から無作為に抽出した15,000名を対象とする郵送調査を行い、8,363名より回答を得た(回収率:55.8%)。このうち、個人情報の提供について同意を得られた5,642名を分析対象とした(有効回収率:37.6%)。現在も当該データのクリーニングおよびデータセット作成に取り組んでおり、これを完了次第分析を開始する予定である。なお、本調査はサンプルサイズをより大きくするため、申請者と同じ研究機関に所属する研究者との共同で実施し、要した費用を按分して支出した。調査を通じて得たデータの使用については、協議の上で共同して支出した研究者が共有して使用することとした。 他方、(2)に関する検討を行うために実施を予定していた首都圏自治体における高齢者の就労支援を担当する職員および専門職者へのインタビューについては、新型コロナウイルスの流行状況に鑑み、2022年度に順延することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初2年間での実施を計画していたが、新型コロナウイルス流行に伴う調査の延期などが生じたため、研究期間を延長している状況にある。
こうした状況下ではあるが、2020年より順延となっていた大規模調査は2021年度内に完了することができた。調査項目は基本属性(性別、年齢、学歴、暮らし向き、既往歴)、家族関係に関する項目(配偶者、同居・別居家族の人数)、社会関係に関する項目(友人関係、サークル活動、支援団体とのかかわり、外出頻度とその目的)、心身の健康指標(精神的健康度、孤独感尺度、老研式活動能力指標)、被援助志向性尺度短縮版などであった。現在も分析に向けた準備を行っており、今後、結果を国内外の学術雑誌や学会で発表を行う見通しが立てられている。加えて、高齢者の社会活動の支援者へのインタビューについても現在調整を行っており、現時点で東京都内にて高齢者就労支援に取り組む複数名の担当者からの前向きな回答を得られている。
以上の研究進捗状況に鑑みれば、予期せぬ事象の発生による研究の遅れは生じたものの、当初の研究目的に沿う形で研究は着実に進んでいると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2021年度に実施した大規模調査については、データクリーニングが完了次第速やかにデータ分析を行い、得られた結果について国内外の学術雑誌や学会での発表を行う予定である。
(2)2022年度に実施を予定しているインタビュー調査については、現在も関係機関との調整およびインタビューガイドの作成に取り組んでいる。 主なインタビュー内容としては、現在取り組んでいる具体的な支援、高齢者の支援ニーズをどのような形で満たしていると考えるか、都市在住高齢者の支援ニーズを把握するため に独自に取り組んでいる方略、援助サービスの利用に対して過度にネガティブな高齢者へのアプローチ方略、高齢者からの援助拒否の経験、現在抱えている問題や課題といった業務内容に関する項目に加えて、支援者として対応する際に意識している点や、対応に際して心掛けている姿勢および接遇、就労または社会参加活動支援の意義など、職務として支援を行うことに対する考え方に関する項目を想定している。 得られたインタビュー内容は文字起こしの委託を行い、SCATなどの手法を用いた質的分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
元来、2021年度に高齢者の就労あるいは社会参加活動を支援する担当者へのインタビューを予定していたが、新型コロナウイルス流行に伴い調整が困難となり、やむを得ず2022年度(次年度)へと延期することとした。この調査に必要な費用(謝礼や文字起こし委託など)を2022年度に使用する計画である。
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