2020 Fiscal Year Research-status Report
里親委託児童の独立自活・自立問題に関する研究―里親制度と養育内容の変遷に着眼して
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20K13761
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 友佳子 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (70707174)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保護受託者制度 / 特殊里親部落 / 治療的里親家庭 / 自立援助ホーム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、主に3つの研究を進めることができた。 まずは、①保護受託者制度の成立と展開に関する研究(課題A-1委託児童の独立自活に関する問題の出現と保護受託者制度の成立展開過程)である。厚生省児童局が昭和37(1962)年にまとめた『里親及び委託児童調査・保護受託者及び委託児童調査結果報告』といった調査報告や新聞雑誌などの史料を集め、保護受託者制度が1960年代に衰退した理由、期待された役割と制約を明らかにした。この成果を、令和3年度に発表する予定である。 次に、②戦後千葉県における特殊里親部落の養育実践に関する研究(課題A-2専門知の流入と里親自身による委託児童の独立自活問題への対応)である。論文「戦後千葉県における特殊里親部落の養育実践」が、日本社会福祉学会『社会福祉学』に掲載された。 最後に③大久保満彦ら日本人専門家による里親養育に関する調査研究に関する研究(課題A-2)については、論文「大久保満彦による「治療の場としての里親家庭」の提唱」を、九州大学教育基礎学研究室『教育基礎学研究』に発表することができた。 その他に令和2年度中に行った研究活動として、④養子と里親を考える会資料室に所蔵されていた資料を整理し、目録作成と閲覧を行ったこと、⑤自立援助ホームの歴史と現在の課題に関する調査研究を進めたこと、そして⑥自立援助ホームにおける参与観察を始めたことが挙げられる。④~⑥については、令和3年度以降引き続き進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保護受託者制度の研究に関しては、新たな史料を発掘し、予想していた以上の発見があり、発表の準備を進めることができた。また、特殊里親部落の研究については、全国学会に掲載され、これまでの研究が評価されたと考える。また、専門知の流入に関しても、査読論文を発表することができた。 一方で、保護受託者制度の実態調査については、当事者を見つけることが叶わなかった。また、緊急事態宣言の影響などにより、面接調査が3度延期されるなど、調査に支障が出てきている。文献資料で補ったりしながら、適宜研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には、具体的に3つの研究活動を行う。まずは、令和2年度に準備した保護受託者制度に関する研究発表を行う。International Standing Conference for the History of Educationと日本社会福祉学会秋季大会にて、発表を行う予定である。 本年度の研究は、主に「児童福祉法」改正と里親制度の抜本的見直し期を対象とする。2つ目の研究活動として、中央児童福祉審議会・社会保障審議会児童部会の議事録などを用い、里親役割に関する規程がいかに変化していったのかを明らかにする(課題B-1「児童福祉法」改正前後の法制度の変遷と里親役割に関する議論)。資料を整理し、里親が「自立支援」を担うことが当然とされるようになる過程を明らかにしたい。 1990年代という比較的新しい時期を対象とするため、今後の研究は、文献調査だけでなく面接調査や参与観察なども取り入れつつ行う必要がある。3つ目として、里親会や自立援助ホームの関係者に対する面接調査を行い、社会的養護の子どもたちの自立支援について、どのような課題を抱えているのかを把握することとしたい(課題B-2里親や里親会による自立支援の意識化と里親養育の変化)。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、学会の大会や研究会がオンライン開催となったこと、面接調査が延期されたことなどが理由として挙げられる。令和3年度には、感染状況を見ながら、面接調査を進めるとともに、対面開催の大会や研究会にはできる限り参加するようにしたい。
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Research Products
(3 results)