2021 Fiscal Year Research-status Report
労働能力のある公的扶助受給者への就労支援のあり方に関する日韓比較研究
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20K13770
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松江 暁子 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (00734831)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 韓国 / 就労支援 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、韓国の公的扶助である国民基礎生活保障(以下、基礎保障)を分析対象とし、①労働能力のある受給者に対して給付とともに就労支援を行う「就労支援付き」最低生活保障といえる仕組みの意義と成果および課題を明らかにし、②日本の生活保護改革への政策的および実践的示唆を探ることを目的としている。 上記の①②に向けて,前年度(2020年度)は,新型コロナウィルス感染拡大のため訪問調査を行うことができず,文献研究を中心に進めた。また,2021年度についても,新型コロナウィルスの感染状況が落ち着かず,渡航したとしても大幅な待期期間を要することから韓国における資料収集や訪問調査を行う予定を立てることが大変困難であった。そのため,2021年度も,日韓の公的扶助を必要とする人々に対する制度政策およびその実態について,書籍・論文・調査報告書等による文献調査を中心に進めた。また,日本および海外の就労支援に関する研究会への参加・報告を通じて,2023年度出版(共著)に向けた準備を進めてきた。 2021年度の成果物としては,『貧困に対する支援』において低所得者支援制度に関する原稿を執筆し,出版された。また,先述したように就労支援に関する研究会において2023年度の出版を企画しており,2021年度は,それに向けた研究会への参加とそこでのディスカッションをふまえ,韓国の就労困難層に対する就労支援に関する論文執筆に着手した。2022年内に執筆を終え,2023年度に出版予定となっている。 ただし日韓の現場への訪問ができていないことが大きな課題として残っている。2022年度は,日韓への訪問調査を実施し,両国の就労支援の実際と課題について明らかにする。そしてそれをふまえつつ,原稿執筆や,学会活動,そして単著出版に向けた作業を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、韓国政府や自治体の責任において体系的に構築されてきた自活事業について,その制度体制を明らかにするとともに、実践現場ではいかに運用され、それに対してどのような評価が行われているのか、そしてそこにみられる政策的・実践的意味は何かを探るために、文献研究および訪問調査を行うことを計画している。2021年度おいては、韓国における国民基礎生活保障および就労支援の事業といえる自活事業に関する文献研究に加え,実践現場に対する調査をつうじてその現状と課題を明らかにすることを予定していた。 文献研究に関しては、国民基礎生活保障制度の改正を追うとともに,その受給者にも関連する新たな韓国型失業扶助と位置づけられる「国民就業支援制度」に関する情報収集を行った。ただし、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の状況が治まらず、韓国および日本国内の実践現場への訪問調査実施には大きな困難があった。 文献研究、研究会への参加は継続して進めてきたが、韓国への訪問調査が困難であった状況のもとでは分析のための情報収集としては限界があったと言わざるを得ず、本研究課題の本年度の進捗状況についてはやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策は以下のとおりである。 まず,学会等での報告である。2022年5月28日には日本政治法律学会の韓国パネルにおける韓国の貧困・格差や雇用・労働政策に関する報告について,討論者を務める。そして10月9日(日)の社会政策学会の書評分科会において韓国の社会政策のあり方に関する研究書籍の評者を務めることとなっている。 次に,韓国の自活事業を担っている機関への訪問である。国民基礎生活保障受給申請を受け付ける住民センターや支給の決定手続きを行っている市(区)役所,自活事業を実際に担っている地域自活センターを訪問し,実務者から現状と課題についてインタビューを行う。また,国内においては,ケースワーカーや就労支援を担う実務者から就労支援にかかわる現状と課題について聞き取りを行う。 最後に,研究成果の成果物作成である。まず,就労支援研究会において担当する韓国における就労支援に関する論文を執筆を進め,出版を予定している(2023年度予定)。加えて,韓国の公的扶助制度に関する単著執筆を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度(2021年度)に韓国へ渡航し訪問調査を実施する予定としていたが,2020年度に引き続き新型コロナウィルス感染拡大の状況が続き,渡航が大変困難な状況であった。また国内でも感染者数が高止まりの様子を見せており,本研究の使用額の中心となるヒアリング調査のための訪問が実施できない状況であった。そのため,旅費が使用できなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 次年度については,渡航に関して日韓の隔離の必要性等に留意しつつ,現場に訪問調査を実施する予定である。また,文献による情報収集も進めながら成果物としての論文執筆や学会活動に取り組む。
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