2022 Fiscal Year Research-status Report
労働能力のある公的扶助受給者への就労支援のあり方に関する日韓比較研究
Project/Area Number |
20K13770
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松江 暁子 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (00734831)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 韓国 / 国民基礎生活保障 / 就労困難層 / 国民就業支援制度 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
学会・研究会での報告については,以下のとおりである。 まず,第9回日本政治法律学会(5月28日)において「韓国における社会政策について考える」をタイトルとした招聘報告を行った。次に,社会政策学会144回において,金明中著『韓国における社会政策のあり方――雇用と社会保障の現状とこれからの課題』について書評報告を行った。そして,9月に研究会において,就労困難層に対する就労支援政策に関する報告を行った。本報告は,本研究で対象とする公的扶助を受給する労働能力がある人々への就労支援および,その隣接制度といえる韓国型失業扶助(国民就業支援制度)における就労支援のあり方に関する検討である。本報告の内容は,共著での出版における担当章(〈仮題〉韓国の就労困難層に対する就労支援)の内容にも結び付くものであった。 また,韓国での調査を実施した。2023年3月13日~22日に,ソウル市ノウォン区の国民基礎生活保障の自活支援担当者,同区内およびウォンジュ市内の地域自活センター(各1か所)において訪問調査を実施した。ノウォン区では,行政の立場からの基礎保障の仕組みの説明および条件付き受給者の決定の流れ,現状と課題について聞き取りを行った。2か所の地域自活センターにおいては,自活事業の内容とその現状と課題について聞き取りを行った。加えて,本調査では,地域の高齢貧困層の就労支援を行っているノウォン区内社会福祉館および障害者の日中活動支援を行っているソウル市内の障害者福祉館についても,訪問調査を行い就労支援や日中活動支援について聞き取りを行った。 これまでの文献研究や上記の韓国調査の成果のひとつとして,「韓国の国民基礎生活保障の意義と限界――「条件付き受給」を中心に」(『週刊社会保障』No.3215[2023.4.17],pp.48-53)がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本助成を受けた2020年~2022年度はまさに新型コロナウィルスの感染拡大により,国内の移動の制限,そして韓国渡航も制限されるなかにあった。そのなかで,国内外での訪問調査を行うことは困難であった。 2022年の半ば以降になって,国内での行動も徐々にしやすくなり対面での学会や研究会への参加が可能となった。11月になって韓国への個人での渡航が可能となり,2023年3月に地域自活センターや行政機関の訪問を行うことができた。 上記のようなコロナ禍による移動の制限が大きいなか,本研究助成で大きな割合を占める旅費の執行を進めることができなかったことは,研究の進捗を困難とさせた。しかし,2022年度内に原稿執筆を行い,2023年度に掲載・出版される予定のものはある。したがって,研究の進捗状況としては,やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年3月にはソウル市内の国民基礎生活保障を担当する行政の公務員や自活事業をになう地域自活センターなどへの都市部が中心となった。今後については,韓国の地方部での国民基礎生活保障の運用状況や自活事業で行われる就労支援の内容について調査を行う。 また,国内についても,都市部および地方における公的扶助受給者および公的扶助受給者ではない就労困難層への就労支援のあり方について,文献および調査研究を進める。 くわえて,日韓における公的扶助受給者を含む生活困難層に対する就労支援のあり方について,相対化を図り理論的な貢献を目指して,先進福祉国家であるヨーロッパにおける労働能力のある生活困窮者に対する政策的対応について調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により,韓国および国内における調査が困難であったため,旅費に関する予算執行を2年半程度の間,行うことが困難であったため,次年度使用額が生じた。 翌年度は,韓国および韓国以外(1か国)での生活困難層への政策対応に関する調査(600,000円),国内での研究会・学会活動(200,000円),出版後の研究会の資料代(300,000円),その他消耗品や書籍の購入など(100,000円)の使用を行っていく予定である。
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