2021 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティカフェが高齢者の社会的孤立防止に及ぼす影響に関する研究
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20K13778
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山本 美香 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (80383363)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的孤立 / オンラインカフェ / 多世代交流 / 自己効力感の向上 / ICT支援 / 社会参加 / 地域でのつながり |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、高齢者と学生をオンラインでつなぐ「オンラインカフェ」を実施し、その意義と成果についてヒアリング調査を実施した。コロナ禍において、仕事の喪失、対面での集まりや別居家族・友人との交流も減少したことで、特に高齢者は孤立感を深めていた。学生とのオンラインを通した交流の効果について、次の3点が挙げられる。①参加者に生活のメリハリがついたこと。仕事を喪失し、家族や、友人・隣人との交流の機会がなくなってしまったことで、買い物に出るしか人との交流がない生活の中で、1ケ月に1回の学生とのオンラインカフェは「よい刺激になった」とのことであった。②PCを使った交流などできないと考えていた高齢者自身の自己効力感を高めることができた。参加者は当初、「自分はスマホも使ったことがないので、こういうことはできないのではないか」としり込みしがちであったが、ipadを繋いだまま、参加者の自宅まで届けるという手法をとることで、この点をクリアした。オンラインカフェを使用しての感想は「これなら自分でもできる」「思ったより簡単だった」との感想が聞かれた。③多世代交流による有用感の獲得。今回の交流は、参加者にとっては孫世代にあたる大学生との間によって行われた。参加者には「社会福祉を学ぶ学生のために、お話しをしてください」と依頼したが、このことは「自分が学生の役に立つことができた」という有用感を提供することが可能となった。また、自宅で空間を越えて他者とつながれるというオンラインカフェの方法は、今後、高齢者が外出が困難になった時などにも、まったくの社会的孤立に陥らないための一つの手法を確立することができたと考えられる。課題としては、今回は、調査研究の参加者がすべて女性であったため、男性高齢者の場合、同様に成果をあげることができるかとういう点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オンラインカフェは、学生と調査研究に参加した高齢者が、まず約半年間、月に1回の交流を行い、それによって、高齢者の生活や意識にどのような影響があったかを最後に、ヒアリング調査を実施するという方法を取った。ヒアリング調査自体は、2022年2月ですべてを終えることができた。最終的には、5名の参加者に対して、4名のヒアリング調査となり、1名は実施できなかった。これは、一人の参加者が途中で連絡が取れなくなったからである。現在は、ヒアリングの文字起こしを行っているところであり、分析・考察はこれからとなる。分析手法としては、佐藤郁哉の質的分析法を使用する予定である。また、調査研究に参加した一方の側である学生からも感想文を取っており、多世代交流がもたらしたものは何か、地域活動に学生がどのように参加できるか(対面でなくても参加が可能である)という別の視点からも分析していくことにしたい。また、今回、調査を業務委託したメンバーからも、本研究に関わった感想について聞き取りを行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が続いて3年目となり、現段階でも対面によるコミュニティカフェは再開の目途がたっていない。そのため、当初予定していた「(対面による)コミュニティカフェに参加する高齢者の地域におけるソーシャルキャピタルの変化」については、最終年度でも達成できる見込みではない。したがって、2022年度においては、自治会のホームページ開設などを行いSNSを活用した情報提供や住民同士の交流が、高齢者の社会参加にどのような影響を与えていくのかについて調査研究を行っていく予定である。ただ、HPの開設やSNSを利用した情報発信については、当該の自治会や団地運営者の許可が必要である。自治会や団地運営者がその必要性を感じていない、またはHPの管理運営についてコスト的にも人材面からも対応できないことによる拒否も考えられることから、その場合の方策についても検討しておく必要がある。また、本年度は、最終年度でもあり、2020年度の「コミュニティカフェ運営者調査」や2021年度の「オンラインカフェ参加者調査」のまとめを行う。さらに、これらの調査からわかった高齢者の社会的孤立防止や社会参加のありかたについて総合的な考察をする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、本来の調査対象としていたコミュニティカフェ(対面型)が、2020年以降一度も開催されていない状態である。そのため、調査研究の計画内容を変更することが求められた。2020年度は、コミュニティカフェ運営者調査、2021年度は、オンラインを利用した多世代型交流の成果研究を行った。最終年度の2022年では、さらにホームページやSNSなどを用いることで、団地住民の交流、特に高齢者の孤立化の状態がどう変化するかを調査したい。ホームページの開設や情報発信について、これまで通り業務委託を行い、進めていく予定である。
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