2020 Fiscal Year Research-status Report
経験サンプリング法による、援助要請の支援を目的とした「イシューセリング」の解明
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20K13782
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
石川 勝彦 山梨学院大学, 学習・教育開発センター, 特任准教授 (30714779)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 援助要請 / イシューセリング / 子育て支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
「イシューセリングの方策の成功事例と失敗事例の収集(1年目)」 産前産後期の母親を対象にインタビュー調査を行う。心身の変化、子どもの変化、環境の変化等により、新たに必要となってくる援助や、母親自身が周囲に受け入れてほしいと願っている自身の変化について、どのように周囲を説得し、理解を得てきたかを尋ねる。イシューセリングの概念を創出したDutton & Ashford(1993)は、イシューセリングの成功/不成功に影響する要因として、「問題の呈示の仕方」、「呈示のプロセス」、「他者の巻き込み方」をあげている。例えばDutton et al(2001)の調査からは、問題をロジカルに提示することは有効だが、繰り返し提案し続けることは有効ではないことを見出している。イシューセリングの理論枠組みに依拠し、ヒアリング調査により周囲に理解、納得を伴って受容されるために必要な要素と方策を抽出することを試みた。合計5名にヒアリングを行った。うち、頻繁にイシューセリングを行うものが2名、行わなかったものが3名だった。ヒアリング調査の結果、イシューセリングの実行/不実行を分ける要因として①利他性の高さ、②贈与に対する抵抗の低さを特性としてもつ、ことが見えてきた。つまり援助要請、イシューセリングに先立ち、贈与を開始することの抵抗が低いことがキーとなる。イシューセリングの方途のパターンは①パーソナルネットワークを構築し、個対個として相互扶助を高めるパターン、②コミュニティを形成し、類似したアクターを集合としてマネジメントするパターン、の2パターンを見出した。具体的なイシューセリングの方略の概要を併せて見出した。また本研究の成果の一部は英文での論文化を予定している。論文に掲載する予定の質問項目の一部は英文化、英文校閲を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5名を対象に、イシューセリングを行う者(2名)と行わない者(3名)をリクルートし、長時間・多角的にヒアリングを行った。イシューセリングを行うものの①心理特性、②イシューセリングのパターン、③コミュニケーション方略、の主に3つについて検討を行った。その結果①心理特性として、贈与、相互作用に抵抗がない、②イシューセリングのパターンには、1対1のパーソナルネットワークを多数保有するパターンおよびネットワーク密度の濃いコミュニティを形成するパターンが見出された、③コミュニケーション方略として、頼む際にはむしろ援助要請を求める相手の話を傾聴すること、自己主張を控えること、相手をマネジメントすること、の有効性が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に基づき、20年度の質的調査から得られた、周囲に理解、納得を伴ってセリングが受容されるために有効な態度、行動、コミュニケーションについて質問紙を作成し、量的調査を通じ態度、行動、コミュニケーションの妥当性・信頼性を確認する。イシューや母親がおかれてる状況によって有効なイシューセリングの方策・要素は異なることが予想される。そのため、方策の一般的な妥当性を確認するとともに、その方策が有効であるイシューの範囲を評価することが重要である。具体的には、研究2では、産前産後の母親を対象に量的調査を行い、イシューセリングの方策の有効性を量的に確認し尺度項目を整備するとともに、問題になっているイシューと有効なイシューセリングの方策の対応を確認していくことが目的である。なお質問紙はイシューと有効なセリング方略の対応関係を探索を含むため、イシューを場面想定法に近い形で質問紙に組み込むことを想定している。本論文は英語での論文作成を予定していることから、イシューを表現した質問項目の英文校閲については本年度の予算から支出した。
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