2023 Fiscal Year Research-status Report
都市部における勤労世代の生活困窮者が適切な支援に繋がる総合的支援モデルの構築
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20K13793
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
松永 博子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70811272)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生活困窮者 / 生活困窮者自立支援施設 / 中高齢者就労支援施設 / 支援の障壁 / 支援の課題 / 支援のニーズ / 多機関連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度以下の4つの学会報告及び原著論文の執筆を行った。①2021年に実施した生活困窮者自立支援施設の支援者及び入居者を対象とした面接調査結果から東京都下の施設で実施されている支援のパターンや入居者の入居に至るプロセスを国際学会で発表した。②①の支援者を対象とした面接調査から、支援者の抱える課題やニーズを示した。③②の発表を基に、日本におけるセカンドセーフティネットとしての生活困窮者自立支援施設での支援の課題を国際学会で示した。④2022年に実施した中高齢者就労支援施設の支援者を対象とした面接調査から、支援の障壁を明らかにした。 ④の学会報告を基に中高齢者就労支援施設における支援の障壁について原著論文を執筆した。具体的な内容は、支援の障壁には、「高齢者へのネガティブイメージが企業側にある」、「福祉機関との連携・協働により支援を止めない枠組みの構築」、「個人情報・本人の同意が支援を阻む要因ともなる」、「フェードアウトさせないための手立てが本当の課題」という4つの概念が見出された。それらから、企業に向けた高齢者イメージの改善、就労から就労ではない形へと社会参加の継続を可能とする枠組みの整備、自治体主導による地域ケア会議へ就労支援機関の参加要請、専門職の活用と専門職団体の連携強化で途切れない支援モデルの構築、生活困窮者自立支援事業の活用,障害者雇用の枠組みの見直し、来所者への支援情報案内という7つの対応策を示した。 本年度は、生活困窮者自立支援施設、中高齢者就労支援施設の調査を経て、支援者が支援の中で発達障害等の精神的な課題を抱える方が多く1機関で行える支援の限界を感じていたことから、生活困窮者自立支援団体に協力を依頼し、支援の現場における支援の課題や多機関連携の状況についてインターネットによる調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、調査の延期をせざるを得ない状況に陥っていたが、2022年度までに以下の3つの調査を実施した。Ⅰ)生活困窮者自立支援施設の支援担当者への面接調査、Ⅱ)生活困窮者自立支援施設入居者への面接調査、Ⅲ)中高齢者就労支援施設の支援担当者への面接調査 2023年度には、Ⅳ)中高齢者就労支援施設の来所者を対象としたインターネット及び紙媒体による調査及び面接調査を実施した。また、研究計画書では、最終年度に自治体と協働で実施する住民調査の中に生活困窮に関する質問項目を盛り込み、生活困窮者が支援に繋がるモデルを提示する予定であったが、一般住民の中に生活困窮者が含まれる割合が少ないことが想定され、一般住民のニーズを把握することよりも生活困窮者自立支援を行う支援者を対象に支援の現場における課題やニーズについて広く情報を収集することが本研究の目的である生活困窮者が支援に繋がるモデルを提示するための方策ではないかと考えた。そこで、全国生活困窮者自立支援ネットワークに調査協力を依頼し、Ⅴ)全国生活困窮者自立支援ネットワークに登録している生活困窮者自立支援機関にインターネットによる調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までに、進捗状況にも記載したⅠ)からⅤ)の調査のⅠ)からⅢ)を実施した。2023年度には、Ⅳ)中高齢者就労支援施設の来所者を対象としたインターネット及び紙媒体による調査及び面接調査、Ⅴ)全国生活困窮者自立支援ネットワークに登録している生活困窮者自立支援機関にインターネットによる調査を実施し、それぞれをデータベース化して分析を行いつつ、学会発表だけでなく論文に取りまとめていく予定である。すでに予定されている学会発表の内容としては、Ⅳ)の中高齢者就労支援施設の来所者を対象としたインターネット調査の分析結果から、中高齢者就労支援施設来所者のメンタルヘルスに関する研究として、①精神的健康状態や心のストレス度の要因について、②①の発表に自由記述の分析を加え、日本における高齢者就労の影の部分として政策的には高齢者の就労による生きがいややりがい、身体機能の低下抑制になるといった方向に位置付けているものの、中高齢者就労支援施設来所者の多くが求職活動に行き詰っており、精神面での課題を抱えていること、また、求職活動が進まない要因として、年齢によって面接に至らないもしくは断られているという現状を国内、国外で発表する予定である。また、学会発表後には論文執筆にとりかかる予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度には、中高齢者就労支援施設来所者に調査を行ったが、新規来所者があまり訪れず、期間を延長したものの回収数が増えなかった。2023年度には、全国生活困窮者自立支援ネットワークに登録している団体に調査を依頼し、メーリングリスト等で調査への協力依頼を呼びかけ、リマインダーをも送ったが、回答者数が増えない状況にあった。2024年度6月には、国際学会にて発表を予定している。また、英文ジャーナルへの投稿も考えており、英文校正、掲載料として残額を使用予定である。
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