2021 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム農村地帯における下痢症対策:Point-of-useでの水の安全確保
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20K13800
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
岩下 華子 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (40742771)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 下痢症対策 / 飲料水 / 生活習慣 / 水道水 / 雨水 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナム北部農村地帯での下痢症のリスク要因の解析を行なったところ、リスク要因として生活用水と飲料水、そしてトイレのタイプが要因として挙げられた。意外なことに飲料水で水道水を使用している人に関しては、雨水を使用する人よりも約1.5倍下痢症に罹患しやすいと示された。トイレに関しては、予想通り、簡易的水洗トイレを使用する人は汲み取り式トイレを使用する人よりも下痢症は罹患しにくく、発生リスクは約0.5倍であった。調査地での観察では、雨水の貯水タンクの管理等は決して衛生的ではないが、住民は水道水よりも雨水を好む。これは、住民の何らかの積極的行動により、雨水の「口に入る直前のpoint-of-useでの水の安全」は担保されている可能性がある。本来であれば、水道水などのインフラが整備されれば、下痢症は少なくなることが期待されるが、現地では停電が頻回に起こり、インフラが整備されたにもかかわらず、水の安全という恩恵を享受できないことも予想される。その場合は、むしろ、各家庭において、昔からの習慣として、単純に水を煮沸するなど確実な水の処理法に頼っているほうが安全かもしれない。ただし、トイレに関しては、汲み取り式よりも、簡易的でも水洗式の方が下痢症は少なく、家庭でのトイレの整備が望まれる。本調査地では、ヒトの便も家畜の便も両方が環境を汚染し、家畜からヒトへの下痢原性微生物の感染のみならず、ヒトから家畜への感染も危惧される状況である。また本調査地は、まだ下水の整備はされておらず、下痢症対策としては普及するに越したことはない。下水の整備の際は、給水管と排水管の設置には十分注意し、給水管への下水などのコンタミがないように管の位置関係を配慮するべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ベトナムへの渡航ができず、下痢症対策につながる”Good practice”を現地で調査することができない状況であった。ベトナムへの渡航ができない状況が続いており、場合によっては、遠隔調査が可能な他地域で、研究体制は変更せず下痢症調査が実施できるかも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
未だベトナムへの渡航ができない状況でもあり、遠隔調査が可能な方法を検討中である。ベトナムの本来の調査地で困難な点としては、(1)新型コロナウイルスの影響により、現地の人々の行動様式が変化し、本研究の背景情報のみからは下痢症対策への応用が困難な場合も考えられること、(2)ベトナム側の共同研究者の新型コロナウイルス感染症に絡む業務が逼迫していることが挙げられる。そこで、他地域も含め、コミュニティ全体での調査ではなく、重度下痢症がより問題になる集団により特化した対策への変更も視野に入れている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、未だベトナムへの渡航ができない状況である。遠隔での対応への切り替えの可能性もあり、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)