2021 Fiscal Year Research-status Report
ESSA下におけるスタンダード・アセスメント政策に関する実証的研究
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20K13858
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
木場 裕紀 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (70804095)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スタンダードに基づいた教育改革 / 教育スタンダード / 州間共通スタンダード / 教育政治 / 行政命令 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「すべての生徒が成功する法(Every Student Succeed Act)」(以下、ESSAと表記)下におけるアメリカ合衆国の教育スタンダード政策の、州および学区における実施状況と課題を明らかにすることを目的としている。 2022年5月現在、州間共通コアスタンダード(Common Core State Standards、以下CCSSと表記)を採択したのちに離脱を決めた州は13州あるが、その離脱の仕方を検討すると、州議会の立法によるものと、州知事の行政命令によるものに分かれる。本研究では、当初の課題意識からさらに問いを掘り下げ、どのような場合には州法によるCCSSからの離脱が目指され、また、行政命令による離脱が目指されるのかを、事例比較により明らかにすることを目指している。新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、当初予定していた訪問聞き取り調査については実施できなかったが、先行研究のレビューと文献調査を進め、教育スタンダードの採択や破棄に教育行政外部アクターがどのように関わっているのかについて、理論的な仮説を導出することができた。現在、州知事が民主党の所属であるにもかかわらず、州議会上下両院で共和党が絶対多数を占め、立法によるCCSSからの離脱を達成したミズーリ州の事例について、州議会の議事録や州教育委員会に依頼して入手した資料を用いて分析を進めているところである。今後、ミズーリ州の他の州についても分析を進め、その成果について国内学会にて公表していく予定である。 また、アメリカのスタンダードに基づいた教育改革を分析する上での貴重な文献資料として、ボストン・カレッジ教授のCochran-Smith教授らが著した書籍の翻訳を進めてきた。今後は校正作業を進め、2022年度中に出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大による渡航制限が解除されず、予定していた訪問聞き取り調査については実施できなかった。しかしながら、教育行政分野のみならず、アメリカの政治学分野にまで射程を広げた先行研究のレビューと文献調査を進めることができ、その結果、教育スタンダードの採択や破棄に州知事や州議会といった教育行政外部アクターがどのように関わっているのかについて、理論的な仮説を導出することができた。特に州知事が民主党の所属であるにもかかわらず、州議会上下両院で共和党の所属議員が絶対多数を占めており、州議会による立法でCCSSからの離脱がなされたミズーリ州の事例について、州議会の議事録や州教育委員会に依頼して入手した資料を用いて分析を進めた。今後、ミズーリ州の他の州についても分析を進め、その成果について国内学会にて公表していく予定である。 また、アメリカのスタンダードに基づいた教育改革を分析する上での貴重な文献資料として、ボストン・カレッジ教授のCochran-Smith教授らが著した書籍の翻訳を進めてきた。翻訳を進める中で、意味が不明瞭な箇所やキーワードについてはZoomを用いたインタビューにより、代表著者であるCochran-Smith教授に直接確認を行った。翻訳した原稿については、校正作業を進め、2022年度中に出版する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在分析を進めているミズーリ州の事例について2022年度中にまとめ、国内学会にてその成果を公表する予定である。また、本研究では、アメリカの州においても二大政党制が広く浸透している事実を踏まえ、州議会及び州知事の政権交代の可能性の高さと、教育行政アクターの選出方法に着目して仮説を導出し、研究を進めている。州知事の所属政党が共和党の場合でも、州議会による立法に州知事が署名してCCSSからの離脱が達成された州や、立法ではなく州知事による行政命令によってCCSSからの離脱が達成された州もあり、それらの州についても検討する必要がある。本来であれば、州教育省や州議会を訪問し、関連資料の収集やインタビュー調査を行うことが望ましいが、2022年5月現在、自由な海外渡航の見通しは不確かであり、本年度中に訪問聞き取り調査ができるかは不明である。そのため、州議会や州教育委員会の資料の収集、教育行政アクターや教育行政外部アクターへのウェブインタビュー調査によって、資料の収集・分析を進め、成果としてまとめていきたいと考えている。 また、アメリカのスタンダードに基づいた教育改革を分析する上での貴重な文献資料として、ボストン・カレッジ教授のCochran-Smith教授らが著した書籍の翻訳を進めてきた。翻訳した原稿については、校正作業を進め、2022年度中に出版する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、アメリカの州教育行政機関や学校を対象とした訪問聞き取り調査の実施を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大の状況が収束せず、訪問聞き取り調査が実施できなかった。今後、海外渡航の見通しが立った場合を考えて、無理に支出を行うことをせず、文献収集と分析に徹した。海外渡航の見通しが立ち次第、訪問聞き取り調査を行う予定である。また、zoomによるインタビュー調査等に切り替える可能性もあるため、zoomインタビューに耐えうるスペックを持つパソコンや周辺機器を購入する予定である。
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