2021 Fiscal Year Research-status Report
ブルーナーの教育論における客観的な知識の性質としての客観性の解明
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20K13859
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
嶋口 裕基 名城大学, その他部局等, 准教授 (80631936)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェローム・ブルーナー / リチャード・ローティ / 構成主義 / ネオ・プラグマティズム / ネルソン・グッドマン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、アメリカの心理学者であるジェローム・ブルーナーがアメリカの哲学者であるリチャード・ローティから受けた影響について検討を行った。これはブルーナーが自身の基づくプラグマティズムを説明する際に、ローティの論述に言及していたためである。この検討は、ブルーナーが知識の性質として客観性をどのような立場から論じているかを明らかにするためのものである。 ブルーナーとローティの関係性について検討した論文はなく、ブルーナーがローティから受けた影響は明らかになっていない。また、ブルーナーをプラグマティストとしてみなす場合、チャールズ・サンダース・パース、ウィリアム・ジェイムズ、ジョン・デューイに代表される古典的プラグマティズムの陣営に先行研究では位置づけられていた。ローティはネオ・プラグマティズムに位置付けられている。 ブルーナーの構成主義に照準を定め、ローティの影響を検討したところ、ブルーナーがみなす真の根拠はローティのプラグマティズム解釈に依拠されていることが明らかになった。ブルーナーの構成主義はネルソン・グッドマンの世界制作論に基づいているが、グッドマンの世界制作論では相対主義を回避できない。それを補うためブルーナーはローティのプラグマティズム解釈に言及している。ブルーナーは欠点を補うためにローティの言説を取り入れたとし、ブルーナーの構成主義の真の根拠はローティのプラグマティズム解釈にあることを示した。これらの検討をもとに、さらにブルーナーのプラグマティズムは古典的プラグマティズムからネオ・プラグマティズムへと歩みを進めていることを発見した。 この研究成果は日本デューイ学会第64回研究大会にて公表した。当初予定していた投稿先の編集委員となったため、次年度に論文として成果を公表できるようにすることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ジェローム・ブルーナーのプラグマティズムにおけるローティの影響について、両者の文献や先行研究から検討した。その際、当初の想定以上にブルーナーのプラグマティズムにローティが影響を与えることを明確にでき、かつ、ブルーナーが古典的プラグマティズムからネオ・プラグマティズムへと歩みを進めていることを見ることができた。 研究成果については日本デューイ学会第64回大会にて公表することができた。しかし、論文としての公表ができなかった。投稿予定先の学会誌の編集委員になったためである。それゆえ、任期が終わる次年度に論文を投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と一昨年度でジェローム・ブルーナーのプラグマティズムにおけるウィリアム・ジェイムズとリチャード・ローティの影響を検討できているため、当初の計画通り、ブルーナーの教育論における知識の客観性について検討する。その際に視点となるのは、カール・ポパーの反証主義である。ポパーの反証主義がブルーナーの教育論における知識の客観性にどのような影響を与えているのかを、これまでのブルーナーのプラグマティズムの検討成果を踏まえながら、明らかにする。 この研究結果を論文として公表できるように研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
2021年度の研究費使用計画は、物品費だけでなく旅費も想定していた。しかし、旅費として使用予定であった学会がオンライン開催となり、旅費として使用することができなかったため、すべての金額を使用することができなかった。旅費として使用予定だった金額の一部は研究中に見えてきた新たな視点を検討するための書籍購入費に充てた。その結果、2021年度の研究として予定していた論点よりもよりも深い成果を得ることができた。2021年度に使用できなかった額は、前年度の研究によって得られた成果を踏まえるための書籍の購入に充て、2022年度の研究成果をより充実できるように使用する。
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