2022 Fiscal Year Annual Research Report
ブルーナーの教育論における客観的な知識の性質としての客観性の解明
Project/Area Number |
20K13859
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
嶋口 裕基 名城大学, その他部局等, 准教授 (80631936)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェローム・ブルーナー / カール・ポパー / 世界3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、アメリカの心理学者である、ジェローム・ブルーナーが依拠しているプラグマティズムと反証主義を観点に、ブルーナーが想定した客観的な知識の性質としての客観性を解明することにある。この目的のもと、本年度はブルーナーが、オーストラリア出身の哲学者であるカール・ポパーの学説をどのように受容しているのかに着目することで、ブルーナーの心理学説における客観性について検討を行った。ポパーに着目したのは、本研究課題の目的にある反証主義の提唱者だからである。 本年度の研究において明らかにしたのは、ブルーナーは文化をポパーのいう世界3に存在していると解釈しており、それゆえ、ブルーナーの心理学説においてはポパーの世界3の意味で客観性を想定できるということである。 ポパーのいう世界3は、彼が提唱する3世界論における三つ目の世界のことである。世界3は思考の客観的内容の世界とされている。より具体的にいうと、科学理論といったことから、物語りまでも含まれる、語られた言語の世界である。 ブルーナーは文化を世界3と解釈しており、加えて、ナラティブ(物語り)によってわれわれは文化を学ぶと主張している。ポパーの言説も踏まえれば、ブルーナーのいう文化やナラティブは世界3に属している。このことから、ナラティブを通して文化を学ぶことは客観性の感度を育むことになると示された。この検討結果は、教育における客観性やブルーナーとポパーの学説の関係性を検討していく上で、少なくない示唆をもたらすといえるものである。
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