2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of Learning Theory and Instructional Method of Inquiry-Based Learning in Living Environment Studies Utilizing Learning Theory and Practice of Inquiry-Based Learning for K-2 in America
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20K13869
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
西野 雄一郎 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (00850398)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロジェクト・アプローチ / 探究 / 生活科 / アメリカ教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度においては、アメリカにおける幼児期(8歳頃まで)の子どもたちによる探究型学習の実態について調査した。具体的には、1980年代にL.G.カッツとS.C.チャードによって紹介されて全米中に広められ、多くの実践事例を有するプロジェクト・アプローチの理論と実践について文献調査した。プロジェクト・アプローチは、20世紀初めのデューイやキルパトリックの着想を基盤としながらも、現代の発達心理学や脳科学も理論的基礎に取り入れた教授・学習アプローチである。プロジェクト・アプローチは、今では中学校段階の子どもに対しても用いられているが、元々は幼児期(8歳頃まで)の子どもたちへのアプローチだった。よって、プロジェクト・アプローチの理論は、低学年段階の子どもたちを探究へと導くものであると考え、その理論の解明に取り組んだ。 プロジェクト・アプローチの探究を支える重要な要素の一つに「協同性」が挙げられた。プロジェクト・アプローチにおける「協同性」とは、「全ての子どもがグループ全体に貢献することが期待され,奨励されるその状況において,一人ひとりが共有した目標を叶えるために作業をする。また,そのお互いの努力がお互いの作業を刺激し合い,学び合う。その結果,共有の成果を最大限にできるようになる。」と定義することができた。 我が国の生活科において軸となるのは,具体的な活動や体験を通して子どもたち自身が思いや願いを実現していく学習過程である。プロジェクト・アプローチに学ぶのであれば,その思いや願いが友達同士の共通のものとなることが期待される。共通の思いや願いが生まれることによって,「協同性」を発揮する場面が生じ,その諸要素をアセスメントすることが可能になると考えた。 以上の概要を含む研究成果は日本生活科・総合的学習教育学会の学会誌である『せいかつか&そうごう』に採録されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は令和2年度において、目標1(アメリカの低学年期探究型学習理論の解明)と目標2(アメリカの低学年期社会科の探究の解明)に取り組む予定であったが、目標1に取り組む中でプロジェクト・アプローチに出会い、そのアプローチの理論と実践の中に低学年期の探究型学習についての研究材料が多く含まれていることが分かり、その解明に1年間をかけて取り組んだ。プロジェクト・アプローチは、デューイやキルパトリック、ピアジェ、ウィゴツキーなどへの歴史的研究を踏まえながらも、現代の脳科学や発達心理学の研究も理論的基礎に取り入れているアプローチであり、低学年期においてこそ探究的な学びが必要であるとされる理論的根拠を示し得るものである。よって、令和2年度は、年間を通じてプロジェクト・アプローチの研究に取り組み、成果を発表することができたことは、本研究の本意達成に、おおむね順調に近づいているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト・アプローチに関する研究を進める中で、我が国の生活科とプロジェクト・アプローチとの類似点も明らかとなり、生活科の着想の源流は、プロジェクト・アプローチと同じく19世紀末から20世紀初頭の教育改革まで遡ると考えられる。その源流から現在に至るまでの低学年期における探究についての理論と実践の系譜を踏まえずに、本研究の本意である「生活科探究理論」の構築は成し得ない。よって当面の課題として、目標2と目標3(アメリカの低学年期理科の探究解明)に視野を広げるよりも、低学年期の探究の理論と実践の系譜について明らかにしていきたい。 それと同時に、プロジェクト・アプローチにおいて低学年期の探究が重要視される理論的根拠についても明らかにしていきたい。例えばプロジェクト・アプローチはヘッドスタートやペリー就学前プロジェクトなどの調査研究の成果も取り入れているとされているが、幼い子どもたちの探究によって、どのような非認知的スキルが備わるとされているのか。プロジェクト・アプローチにおける非認知的スキルの涵養について解明することで、低学年期の探究の重要性を明らかにすることができるだろう。
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Causes of Carryover |
令和2年度においては、コロナ禍の状況下でアメリカ現地における調査研究が叶わなかった。令和3年度は現地調査を実施したい。
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Research Products
(6 results)