2021 Fiscal Year Research-status Report
Construction of Learning Theory and Instructional Method of Inquiry-Based Learning in Living Environment Studies Utilizing Learning Theory and Practice of Inquiry-Based Learning for K-2 in America
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20K13869
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
西野 雄一郎 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (00850398)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生活科 / 探究 / プロジェクト・アプローチ / 進歩主義教育 / Junius L. Meriam / 低学年 / 子ども中心 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の実施状況報告書に記したように、令和3年度は①低学年期の探究の理論と実践の系譜について明らかにすること、②アメリカで実践されているプロジェクト・アプローチにおいて低学年期の探究が重要視される理論的根拠について明らかにすることに重点をおいて研究を進めた。 ①について、生活科の源流は20世紀初頭のアメリカ新教育に求められることが多く、その時代に盛んになった子ども中心の教育と生活科教育との親和性の高さを明らかにしてきた。子どもたちの生活世界に対する興味から派生する探究的な活動を重要視する子ども中心の教育は、しばしば「学問軽視」であったり「無計画」であったりすると批判されてきた。しかし、決して子ども中心の学校全てがそうではなかったことを本研究で明らかにした。例えば、J.L.メリアムが指導したミズーリ大学附属初等学校における実践は、あくまで子どもの現時点における生活を豊かにすることを目標としながらも、結果的に学問的な知識を獲得することを可能にしていたことを明らかにした。 ②について、プロジェクト・アプローチにおいて早期段階の探究が重要視される理由は、この時期の子どもたちの観察したり調べたりする心的傾向を涵養することは、その後の人生の全ての段階における探究的な態度につながるということが明らかになった。また、学級の子どもたち一人ひとりが共通の目標に向かって探究し協働する中で、子どもたちの後の人生を豊かにする社会性や情動性が涵養されることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度までの2年間において、アメリカにおける低学年期の探究的な学習について、プロジェクト・アプローチの理論と実践から学んできた。また同時に、生活科学習における「思いや願いを叶える」という探究的な学習の理論的基盤をアメリカの20世紀初頭の新教育運動から派生した子ども中心の教育に見出し、その教育の実態解明に取り組んできた。これらの研究により、低学年期の探究の重要性の理論的根拠を見出すことができた。また、低学年期の探究的な学習態度を涵養するための要素や、低学年期の探究的な学習がもたらす効果についても抽出することができた。よって、令和3年度に達成するべき目標だった「【目標4】アメリカの低学年期の探究的な学習を整理・分析して、重要な要素を抽出する」を概ね達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度において当初計画していた目標は、「【目標5】アメリカの低学年期探究理論によって生活科学習を分析し、『生活科探究理論』を構築する」ことと、「【目標6】『生活科探究理論』による生活科の教材開発をして実践を行い、成果を検証する」であった。よってまず、これまで蓄積してきたアメリカにおける低学年期の探究的な学習の各要素と、生活科学習との親和性を検証し、援用の可能性を見出したい。次にその検証結果をもとにしてアメリカの理論を援用した「生活科探究理論」を提示し、それを基盤とした教材開発をして実践を行い、成果を検証したい。 ただし、COVID19にかかわる影響もあり、小学校における実践が困難になることが考えられる。その場合、これまでに報告されてきた質の高い生活科実践を、本研究で提案する「生活科探究理論」を用いて分析することによって、その理論の有用性を検証することなどを代案として考えている。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、アメリカ渡航が叶わなかったために、次年度使用額が生じた。次年度においては、経費を使用してアメリカに渡航し、生活科の源流とされる20世紀初頭の新教育運動下で誕生した諸実験学校の資料を収集したい。
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