2022 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児童生徒の目標・評価システムへの包含――アメリカ合衆国での理論形成と課題
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20K13870
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
羽山 裕子 滋賀大学, 教育学系, 准教授 (20737192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 教育目標・評価 / カリキュラム / 知的障害 / 配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、①新たな教科・領域における知的障害児向け教育内容の分析と②インクルーシブ教育推進期のアメリカにおける、支援や配慮に関する論点の確認を行った。 ①については、これまでカリキュラムの比較分析の対象としてきた国語科の限界をふまえて、比較分析の幅を広げることが目的であった。具体的には、国語科の場合は日米の教育内容の相違が大きいことから、教育内容スタンダードや評価課題を単純に日本のそれと比較しづらい部分があった。そこで、今年度はアメリカの州教育内容スタンダードの代替版(州によってEntendedやAlternate等の名称)に初等教育段階から理科が含まれていること、一方、日本の初等教育段階の知的障害児教育においては、「領域や教科を合わせた指導」として生活に題材をとる単元が散見されることをふまえて、理科的な内容かつ生活と関連の深い内容として、動植物を扱う学習、とりわけ飼育・栽培活動に注目して分析を進めた。 ②については、通常のハイステイクスな試験への知的障害児の参加を想定したデータ収集・分析がNCEOで行われていた点(2021年度研究部分)をふまえて、知的障害児が通常教育下での試験に包含されることを肯定的にとらえる背景に1980~90年代アメリカでのインクルージョン追求の思想的成熟があることを予想し、その実態が、評価に至るまでの部分の実践(例:日常的な指導における支援や配慮の形態)も含めてどのように表れるのかを分析した。 成果の①については、日本に関する分析部分を年度末に学内誌に投稿し、掲載が決定している。②については2023年度前期の学会で発表の予定があるため、2022年度内には公開をしていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度前半に成果発表の予定が重なったため、2022年度中に発表の完了した成果が無い(掲載決定済の投稿中業績は有り)。また、アメリカ合衆国での出張資料収集が行えていない事態は、2021年度以前と同様である。 前年度よりやや改善した点としては、京阪神地域の他機関での資料収集を年度後半に数回実施できた点が挙げられる。本研究は新型コロナウィルスの流行と同時に開始されており、所属大学以外での資料収集が常に懸案事項であったが、わずかに改善の兆しが見えたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、既に決定している成果発表の機会に向けて、2022年度の作業結果をまとめていくことがまず挙げられる。また、2022年度は検討対象の教科を拡充することを重視し、検討対象の州を増やして比較する作業までは手が回らなかったため、今後はNCEOの個別の州に関する調査資料の分析を行いたい。さらに、懸念事項である国内外での出張資料収集について、学会出張と合わせて実施するなど、本務校での業務及び感染症対策に支障の出ない実施形態を引き続き模索する。
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Causes of Carryover |
予算の大半を占める旅費について、2022年度も海外出張が行えなかったため、繰り越し分と合わせてかなりの未使用額が生じてしまった。これについては、基本的には海外への資料収集のための出張旅費として使用することを目指す。ただし、研究当初に予定していたような長期の出張は難しい可能性もあるため、海外学会へのオンライン参加等も含めた、情報収集に係る費用として使用したい。
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