2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13875
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
平野 拓朗 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (70599670)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 文化-歴史的活動理論 / 拡張的学習 / 発達の最近接領域 / 足場かけ / 情動的体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、授業における「グループ学習」の活用において、子どもの学びが深まるアクティブラーニングの方法を提示するため、2020年度は、「最近接発達の領域」における子どもの「相互作用と内化」(子どもの学びの深まり)の関連について、主に大阪府にあるオルタナティブスクールの実践事例を読み解く形で研究を進めた。 具体的には、教育の境界研究会年報第17号に「学校学習の拡張としてのカリキュラム開発に関する一考察」を掲載し、日本教育方法学会第56回大会自由研究発表において、「オルタナティブスクール実践における足場かけ(scaffolding)に関する一考察」を発表した。前者においては、日常的文脈から分離した「カリキュラム」(死んだテクスト)が、子どもたちの日常的生活における倫理的な問いを解決する道具(生きたテクスト)として協働的に活用されるに至るプロセスを考察した。結果「生きたテクスト」の創造は、教え手と学び手の間隙が意識され、それを架橋する「集団的道具」が必要であること、また、この「集団的道具」は、子どもたちの特定の日常的生活に根ざしながらも高度な倫理的課題を含む学習内容であることを明らかにした。後者においては、「最近接発達の領域」理論の一解釈である「足場かけ」理論を拡張することを試みた。それは、機能主義的な教授の理論として捉えられがちな「足場かけ」理論に、子どもの情動的体験(子どもの学びの深まり)という次元を含めた理論化を進めることであった。 以上2つの研究は、「最近接発達の領域」理論を子どもの「相互作用と内化」(子どもの学びの深まり)という次元から再解釈することであり、「グループ学習」の形式化に陥らない方途を示す可能性を有していると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、第1に、理論研究として「最近接発達の領域」理論に関する先行研究を踏まえ、子どもの協同的な学びのプロセスを捉える観点を提示する。第2に、第1の観点をもとに、学習形態を異にする3校の小学校においてフィールド調査を行い、各校における子どもの協同的な学びのプロセスを比較・検討することで「相互作用と内化の関連」を明らかにする。そして第3に、3つのフィールド調査によって見出された「相互作用と内化の関連」に関する知見から「グループ学習」を活用した子どもの学びを深めるアクティブラーニングの方法を提示することとしていた。 特に第1と第2を同時並行的に進めていくことを考えていたが、新型コロナウィルスの蔓延により、3校のフィールド調査がまったく適わない状況となってしまった。主に、第1の理論研究を中心に本研究を進めることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記第1の理論研究と同時並行的に、第2のフィールド調査を進める。新型コロナウィルスの感染状況に応じて、新たなフィールド先の開拓やあるいは、オンライン等での各校とのやりとり等を工夫しつつ本研究を継続する。
|
Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由は、新型コロナウィルスの蔓延により、当初予定していた国際学会(国際活動理論学会)への参加とフィールド調査として予定していた3校の小学校へいくことができなかったからである。 本年度は、新型コロナウィルスの感染状況を見計らいつつ、国際学会への参加及びフィールド調査を試みる。また、実際に行くことが適わない場合は、オンライン環境を充実させることで対応する。
|
Research Products
(2 results)