2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13875
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
平野 拓朗 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (70599670)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 最近接発達の領域 / 足場かけ(scaffolding) / 心内化 / 欲求・動機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、授業における「グループ学習」の活用において、子どもの学びが深まるアクティブラーニングの方法を提示するため、2021年度は2020年度に引き続き、「最近接発達の領域」における子どもの「相互作用と内化」(子どもの学びの深まり)の関連について、主に大阪府にあるオルタナティブスクールの実践事例を読み解く形で研究を進めた。 具体的には1年間のフィールドワークの成果を論文「足場かけ(scaffolding)の内的論理に関する一考察:NPO法人・コクレオの森箕面こどもの森学園の事例をもとに」にまとめ、関西教育学会紀要第22号に掲載した(掲載予定)。本論では、ヴィゴツキーの「最近接発達の領域」の一解釈としての「足場かけ(scaffolding)」について考察し、学習者の心理内的な経験を踏まえた「足場かけ」の方法に迫ることを目的とした。また、本論では具体的事例として認定NPO法人コクレオの森・箕面こどもの森学園における「プロジェクト学習」の一事例に着目し、考察した。結果、「足場かけ」の内的論理の契機となるのは精神内的局面と精神間的局面の相反する事態であり、またその対立をのり越えるための「足場かけ」は、後者において前者を統制ないし抑制することではなく、子どもの心理内的な経験において、より大きな願望(動機)を生み出すことであった。さらに、より大きな願望(動機)の形成は、日常的生活から生じる欲求を基本とすること、そして(自分たちの欲求とは異なる)他者の欲求・動機を含めることであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、次のようなプロセスを構想していた。第1に、理論研究として「最近接発達の領域」理論に関する先行研究を踏まえ、子どもの協同的な学びのプロセスを捉える観点を提示する。第2に、第1の観点をもとに、学習形態を異にする3校の小学校においてフィールド調査を行い、各校における子どもの協同的な学びのプロセスを比較・検討することで「相互作用と内化の関連」を明らかにする。そして第3に、3つのフィールド調査によって見出された「相互作用と内化の関連」に関する知見から「グループ学習」を活用した子どもの学びを深めるアクティブラーニングの方法を提示することである。 以上の3つのプロセスのうち、第1の先行研究の整理および理論的提示に関してはある一定の成果を得た。しかし第2、第3に関しては、新型コロナウィルスの蔓延により、昨年度と同様に3校のフィールド調査がまったく適わない状況となってしまった。主に、第1の理論研究と第2のオルタナティブスクールの実践事例をもとに本研究を進めることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記第1の理論研究と同時並行的に、第2のフィールド調査および第3の方法の提示を進める。新たなフィールドの開拓やオンライン等での各校とのやりとり等を工夫しつつ本研究を継続する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルスの蔓延により、当初予定していた国際学会(国際活動理論学会)への参加とフィールド調査として予定していた3校の小学校へ行くことが適わなかったからである。 本年度は、新型コロナウィルスの感染状況を見計らいつつ、国際学会への参加及びフィールド調査を試みる。また、ここ2年間で見出された理論的見地を深めるために国内外の研究者や研究室との交流を深める。
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Research Products
(1 results)