2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K13875
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
平野 拓朗 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (70599670)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 最近接発達の領域 / 概念形成 / 心的体験 / 足場かけ(scaffolding) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、授業における「グループ学習」の活用において、子どもの学びが深まるアクティブラーニングの方法を提示するため、2022年度は、「最近接発達の領域」における子どもの「相互作用と内化」(子どもの学びの深まり)の関連について、学びの共同体の実践校の公開授業研究会や福岡、滋賀の「学びの会」に参加し、授業実践事例を読み解く形で研究を進めた。 具体的には、教育の境界研究会3月例会において、「ヴィゴツキー発達論の再考:概念形成のバック・トゥ・ザ・フューチャー」と題して研究成果の一部を発表した。本発表では、協同的な学びにおける教師の足場かけが、子どもにとっては未来からの呼びかけとして起動すること、子どもの概念形成は、言わば未来に原因を求める因果論として観取することができることを協同的な学びの授業実践に即して示した。 特に、第1に、「最近接発達の領域」を教授・学習に遅れて進行する発達に注視するという観点から捉えることで、ヴィゴツキー発達論を再考することを主張した。第2に、その観点は、ヴィゴツキー晩年の perezhivanie(心的体験)という概念からアプローチすることができることを示唆した。そして第3に、意味の単位である言語的思考と意識の単位である心的体験との不一致に着目することで、教授・学習に遅れて進行する発達(の概念形成)を把握すること、また、日常の授業からそのような場面を考察することの必要性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、次のようなプロセスを構想していた。第1に、理論研究として「最近接発達の領域」理論に関する先行研究を踏まえ、子どもの協同的な学びのプロセスを捉える観点を提示する。第2に、第1の観点をもとに、学習形態を異にする3校の小学校においてフィールド調査を行い、各校における子どもの協同的な学びのプロセスを比較・検討することで「相互作用と内化の関連」を明らかにする。そして第3に、3つのフィールド調査によって見出された「相互作用と内化の関連」に関する知見から「グループ学習」を活用した子どもの学びを深めるアクティブラーニングの方法を提示することである。以上の3つのプロセスのうち、第1の先行研究の整理および理論的提示に関してはある一定の成果を得た。しかし第2、第3のフィールド調査に関しては、新型コロナウィルスの蔓延により、当初の予定から大幅に遅れて昨年度より本格的に開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記第1の理論研究と同時並行的に、第2のフィールド調査および第3の方法の提示を進める。昨年度と同様に、学びの共同体の実践校における公開授業研究会と福岡、滋賀での学びの会に参加し、実践事例の読み解きを進める。また、「学び合い」の実践校における協同的な学びのフィールド調査も行い、3つの協同的な学びのプロセスに関する比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
予定している公開授業研究会や学びの会の中止、延期等で出張旅費が予定よりもかからなかった。次年度においては、予算の配分を用意周到にして対応する。
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Research Products
(1 results)