2022 Fiscal Year Research-status Report
戦時期日本の女性労働政策からみる学齢期保育の実証的研究
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20K13889
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
亀口 まか 龍谷大学, 文学部, 准教授 (10554082)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学齢児童 / 放課後 / 女性労働 / 社会事業 / 勤労動員 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、地域婦人会について、愛知県地域婦人団体連絡協議会にて資料調査を行った。また、前年度に収集した資料をもとに分析、考察を進め、その成果を論文、学会発表を通じて公表するとともに、領域横断的な研究会を行うことにより、本研究の枠組みである女性労働と社会教育政策、実践の歴史と現在について検討を深め、今後の研究の課題を明確にすることができた。 研究成果の公表についてまず論文では、「女性労働と児童保護の視点からみる1944年保護者不在家庭児童調査の成立過程」(『社会教育学研究』第58号、2022年6月)において、戦時の社会教育政策として勤労動員による保護者不在家庭を対象とする放課後生活を支える社会事業が実施されていった経緯を考察した。また学会発表では、「教育・学習課題としての女性労働」(日本社会教育学会・韓国平生教育学会「第13回日韓学術交流研究大会」於:韓国放送通信大学、2022年10月28日)において、ジェェンダー平等社会の実現に資する女性労働に関する教育・学習の課題を発見するという問題意識のもとに、戦時期日本の女性労働政策・社会教育政策としての放課後支援の取り組みについて報告した。 研究会については、「労働・家族にかかわる社会教育政策・運動・実践の歴史をとらえる――活動を担ってきた人々の声や記録から描き出すことの意味とその方法を探る」(2022年8月26日開催)をテーマとして、永岡崇氏を講師として、永岡氏の著書『宗教文化は誰のものか――大本弾圧事件と戦後日本』(名古屋大学出版会)で示された協働表象としての「読みの運動」という考え方、方法論について学んだ。また、女性労働・ジェンダーと社会教育活動についての研究交流会(2022年8月27日開催)において、ジェンダー・セクシュアリティの視点から実践と研究を架橋する取り組みとその課題について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、分析、考察を行った研究成果の一部について、論文、国際学会の場で公表することができた。また、領域横断的な研究会の実施によって、今後の研究の方向性、方法論について探求することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究で明らかにしつつある戦時期における学齢期保育の実態、議論・政策の動向をふまえ、戦時期の事業展開が、戦後はどうなっていくのかを検討する。具体的には、高度経済成長期前後の女性労働の状況と国が打ち出した放課後対策の動向について、前年度から資料調査並びに関係者への聞き取りを開始してきている地域婦人会の活動とのかかわりを手掛かりに明らかにすることを計画している。最終年として、教育・福祉・労働等の先行研究を領域横断的に検討し、その流れのなかに女性労働と子どもの育ちに関する社会教育政策を歴史的に跡づける本研究の成果を位置づけることにより、今後の研究課題を提示することを目指す。
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Causes of Carryover |
引き続き、新型コロナウィルス感染症の影響により、地域資料の収集がやや遅れている状況であるため、それらに係る助成金が未使用の状況である。今年度は調査実施に見込みが立っており、着実に進めていく予定である。
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