2021 Fiscal Year Research-status Report
Hermeneutics of "Locality": A Microgenetic Study of Understanding the School District as a Basis for Educational Practice
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20K13892
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木下 寛子 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (40807195)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学校 / 校区 / 地域性 / 解釈学 / 実践知 / フィールドワーク / 社会科学の方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度、2021年度は週に一回半日程度の継続的調査を行う予定を立てており、特に学校等での子ども・教師らのお喋りの場全体に関する文脈を踏まえた記述および発話採集が中核的な課題であった。しかしながら、感染症拡大の危険性および長期化の可能性に鑑みて、他者との接触の多い調査を極力控える必要から、事前の研究計画の変更を余儀なくされた。2021年度より本格的な調査をスタートすることができているが、感染症拡大下の2年間の間に大幅な学校組織成員の入れ替わりや編成の変更などがあり、調査そのものの前提となる学校の状況理解のしなおしと関係性再構築が最優先課題となっている。 いっぽうで文献レビューおよび関連領域の研究者との対話の促進のもと、今年度は解釈学およびそれとの近接性の高い、質的研究、解釈学的現象学の諸研究の研究の概観を進めて社会科学における解釈学の議論との接続やそのほかの近接領域との関係性が見えつつある。また校区という基本的な地域の単位を支える考え方の概観も行い、学校統廃合が進む昨今において校区という単位を暮らしの単位として扱う議論を展開した。 その成果は医療・看護系の研究会および発達心理学会等でのシンポジウムでの話題提供、指定討論等においても提示することとなった。これらの成果発表において、質的研究、フィールド研究にとっての解釈学という方法論の可能性に触れた。それと共に、定住して学び育つことを前提とせず、移動しながらも校区で暮らす都市生活においての「学校・校区とその理解とはどのようなものであるのか」という本研究の問いに、学校という器が地域で暮らす多様な人(とその人たちとの出会いの可能性)を見えるようにする契機となりうること、また校区という単位が、「子どもが歩ける距離」を基本としているために実現する諸可能性に光を当てる論考を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症拡大を予防することが求められている状況が続いており、基本的な調査が困難であったところからの復帰過程が今年度であった。また申請者が研究拠点となる大学を異動したことに伴い調査基盤の整備が引き続き必要となったことが若干の遅れを引き起こしている。一方で、昨年度からの調査計画の見直しによって、文献レビューへの力点の置きなおし、およびこれまでのフィールドノーツの振り返りを行いながら、暮らしの場としての校区の記述と表現の実現に足掛かりを得たことが今年度の大きな進捗となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究拠点が教育学を専門とする多様な研究者が集う機関となり、またその近接領域での社会・地域研究を行う研究者らとの連携が可能になった。フィールド調査において重要な基盤となる、問題設定自体の循環的な練り直しが実現する環境が整ったため、関連する研究領域の研究者との議論を手厚く行うとともに、調査を中心とする計画については、今年度の成果である「暮らしの場としての校区」の理解を軸としながら、学校現場の教師らが教室内の出来事だけではなく、子どもたちが暮らす校区にも目を向けるようになる様子を取り扱い、その分析から校区理解の微視発生的な過程を明らかにする試みに着手したい。 また、方法論としての解釈学については、近接領域の文献および議論にも視野を広げつつ、一歩踏み込んだ統合的な理解を目指していくことになる。
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Causes of Carryover |
《旅費について》2020年度開催予定の韓国での韓国心理測定評価学会との共同開催となる学会大会(日本質的心理学会大会)が2021年度に延期となったため、当該年度に再度旅費を計上していた。しかしながら最終的に韓国での開催は取りやめとなり、実質的に旅費分の執行が難しくなった。《人件費・謝金、その他について》また調査先等での調査遂行と倫理的配慮のためのメンターへの謝金、および報告用の印刷費を計上していたがいずれも調査遂行自体の体制立て直しのため執行予定がなくなった。 これらの経緯と前後して、調査全体の見直しおよび理論的な検討を行ったため、文献収集(一部研究フィールドとのコミュニケーション形成のための物品(図書・絵本)も含む)に予算の大半を充当した。またフィールドステーションでも随時文献を照合しながらの検討を行う必要が生じたことから、フィールドステーションの環境整備を行った(電子文具等)。 翌年度は国内の学会に加えて、海外の学会への招へい・参加等が見込まれること(ただしオンラインの可能性あり)から、旅費および海外文献の入手、校閲費などを含めた予算を組み、研究活動を進めていく。また最終年度のとりまとめに向けてフィールド研究を行う国内の研究者からの助言を得るための旅費、謝金を予定する。
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