2023 Fiscal Year Research-status Report
Hermeneutics of "Locality": A Microgenetic Study of Understanding the School District as a Basis for Educational Practice
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20K13892
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木下 寛子 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (40807195)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 学校 / 校区 / 地域性 / 解釈学 / 実践知 / 翻訳 / フィールドワーク / 社会科学の方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域性理解は学校教育・学校生活の諸実践にとっての基礎をなすが、いまだ十分に理解されるに至っていない。このような見通しに基づき、地域性理解の内容およびその発生プロセスの解明を目標とする本研究に対し、昨年度までの研究では、「学校・校区」の理解を、移動しながらも校区で暮らす都市生活においてのもの、あるいは「暮らしの場としての学校・校区」として理解する視点を導き、厚みと多義性を持った問いの再設定を進めてきた。また、感染症拡大状況下の2年間に生じた学校組織成員の再編、および申請者自身の研究拠点の変更を背景として、調査そのものの前提となる学校の状況理解のしなおしと関係性再構築を最優先課題とした。 今年度(2023年度/令和5年度)は、引き続き学校の状況理解および関係性の再構築を行うとともに、フィールドで収集された学校成員らの発話データや観察記録をもとに、保護者、子どもたち、教師らの学校・校区の理解が更新される場面として毎年繰り返される行事や局面を3つ抽出し、その前後の文脈を含めた整理を進めた。また、課題となっていた、本研究の探索的なプロセスに資する現代解釈学の概観を進めた。これらの調査に基づいて、人間・環境学会において学校・校区の理解に関する現時点での全体的な展望を報告し、日本質的心理学会において3つの場面・局面のうちの1つに焦点化した分析・理解を報告した。この成果を踏まえ、教育経営学および発達・教育心理学等、子どもの学びと育ちに関わる諸領域の研究者との議論や、観光・経済に関わる新規技術をめぐる議論が行われた。また、あるフィールドを拠点として生活史をもとに近現代を問う研究者を研究拠点である九州大学に招へいし、シンポジウムを企画することを通じて、「解釈」とは、単なる事象の理解の方法を指すのみならず、環境のなかを生きる人間を理解するうえで必須の鍵概念となることを議論をもとに明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症拡大状況下の2年間の間に生じた大幅な学校組織成員の入れ替わりや編成の変更、および申請者自身の研究拠点の変更を背景として、今年度も引き続き、調査そのものの前提となる学校の状況理解のしなおしと関係性再構築を最優先課題とした。この課題についても、メンターを依頼し、研究の体制の見直しおよび再体制化を行った。また、研究全体の遂行のなかで抽出された3つの場面・局面を理解するために、学校内での出来事の焦点観察を分厚くする必要が生じた。また学校外の諸場面にも調査を広げることが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までの経過では、「移動」のなかに学校や校区を位置付ける視点、そして校区を学びと育ちの手段に閉じない「暮らし」の単位として位置付ける視点と共に、「表現されたもの」と理解との関係を視野に入れる必要性を見出した。これらの視点を踏まえつつ、2023年度に抽出した3つの場面・局面については焦点観察を行うと共に、学校組織成員へのインタビュー、および校区・近隣地域に居住する人で、当該の学校に縁の深い方々への面接調査を補助的に進めていくことで、最終年度のまとめに必要な資料をそろえるとともに、現時点での総括を行う。 また、申請者自身の研究拠点の変更以降、昨年度末にかけて、学校の中での申請者に対する理解のあり方そのものが変容しつつあることから、それに相応する参与の形を模索することが必須となる。申請者は面接調査の経験が少ないため、この調査の計画・遂行および振り返りと併せてメンターからの助言を受ける予定である。 以上の調査内容の総括と現代解釈学の概観を踏まえて、いったんの研究課題の集約を試みることが最終年度の課題となる。
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Causes of Carryover |
本研究課題に次年度使用額が生じた理由は3点あげられる。一点目に、新型感染症拡大に伴う調査自体の遅滞、二点目に申請者の研究拠点の移動が生じたことがあげられ、これらによって調査・研究の再体制化が必要となり、研究遂行に想定以上に時間を要したためである。これに加えて、研究期間中に分析・理解の視点が複数追加され、全体の吟味・見直しに時間を要したことで、研究計画を精緻にするための調査の追加と併せて次年度使用額が発生した。2024年度に請求した助成金については、学校行事と表現、および地域・校区の理解を対象とする新たな調査計画に充当し、本使用額については本課題「地域性の解釈学」の成果をまとめて公開する過程に充当する予定である。
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