2021 Fiscal Year Annual Research Report
Sociological Approach toward Students' Self-Esteem: Focusing on the Influences of Social Class, Academic Achievement, and Educational System
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20K13899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 いづみ 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30709548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己肯定感 / 学力 / 階層 / 教育システム / 国際比較 / PISA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,先行研究の整理から「教育システムにおいて集団内の同質性が高いほど生徒の自己肯定感が低くなりやすい」という仮説を立て,PISA2018データを用いた分析を行い,そのメカニズムの一端の解明を目指した.分析の結果,一定の経済水準以上の国や社会では,学校内の階層的多様性が大きい国ほど,生徒の自己肯定感が高い傾向にあることが示唆された.逆に,日本のように学校内の階層的多様性が小さい国では,生徒の自己肯定感が低い傾向にあることが分かった.より一般化して言えば,教育システムにおいて,集団内の異質性が大きいほど生徒の自己肯定感が高くなりやすく,同質性が大きいほど自己肯定感が低くなりやすい,ということになる.こうした結果は,先行研究で整理した「生徒の自己概念は,学校で身近に接する生徒集団との比較によって相対的に決まりやすい」という点を,国の教育システム単位でもある程度裏づける結果になっている可能性がある. あわせて今回の分析により,国レベルの自己肯定感の水準が,生徒が困難に直面した際に解決策を見つけられるかや,他人の目を気にせずに物事に取り組むかといった行動面への意識とも強く関連していることが明らかになった.そのため,自己肯定感という自己の内面に対する意識や感情は,社会集団の同質性や異質性を媒介して,より対外的かつ社会的な意識や行動とも結びついている可能性が示唆された.むろん,現段階での分析は試行的なものであり,ケース数が少なかったり,因果関係が特定しきれていない点など不十分な点も多い.今後は,同様の方向性でモデルや変数を精緻化することにより,国レベルの関係性の追究はもちろん,個々の社会内での関係についてもさらに探求を行い,異なる文脈でも「集団の多様性が自己肯定感の高さにつながる」という命題が実証されるのかについて検討を続けていきたい.
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