2021 Fiscal Year Research-status Report
高等教育のSTEM分野における女子の希少性に関する計量社会学的研究
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20K13904
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
白川 俊之 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (40805313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | STEM / ジェンダー / 高等教育 / 専攻分野 / 教育機会の格差 / パネル調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「高校生と母親調査,2012」データを用いて人々が高等教育を受ける機会に関わる不平等を、ジェンダーの観点から明らかにすることである。2021年度は、(1)進路希望(専攻分野の選択)に及ぼすジェンダーの影響の分析、(2)進路希望と実際の進学結果との乖離にみられるジェンダー差の分析の2点を中心に、研究をすすめた。
(1)専攻分野の選択におけるジェンダー差に関して「学校基本調査」の結果から確認できるように、2020年代に入ってからも理学部における女性割合は30%未満、工学部においてはその割合は15%程度と、依然としてジェンダー差は解消されず、残り続けている。このような専攻分野の選択とジェンダーの関係を生みだすメカニズムを、検討した。「高校生と母親調査,2012」を分析した結果、高校生の職業期待について、女性割合の高い職業を希望する傾向が女子に多くみられることがわかった。さらに職業期待と専攻分野の選択のあいだに強い関係があり、多変量解析では職業期待をコントロールすることで、STEM分野の選択における男女間の格差が、部分的に縮小することが明らかとなった。
(2)進路希望と実際の進学結果との乖離に関して、男女のあいだに傾向的な違いが認められるかを、「高校生と母親調査,2012」の追跡調査を用いて検討した。その結果、高校2年生の時点で同じような専攻分野の希望をもっている場合でも、女子は男子よりも高等教育進学の段階で、STEM分野に進学する確率が低いことが確認された。そのような男女差の背景には能力に関するステレオタイプの存在があり、男性の方が数学の能力が高いというステレオタイプを内面化している女子はSTEM分野に進学する確率が低下する一方、同様のステレオタイプをもつ男子はよりSTEM分野に進学していることなどが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会や研究会での複数回の報告やそれを踏まえた論文の執筆を行っており、概ね当初の計画通りすすんでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度となる2022年度も、専攻分野の選択とジェンダーの関係に焦点を当てて、実証的な分析をすすめていく。2022年度は、前年度に学会等で報告を行った上述の研究実績の概要の(1)、(2)の結果を整理して、論稿として出版することが主な課題である。また、中長期的な今後の研究の方向性として、「高校生と母親調査,2012」と同様の枠組みで、新しいコーホートを対象に調査が行われている「中学生と母親パネル調査」を用い、中等教育在籍中の専攻分野の選択の変化の軌跡を探ることも、視野に入れている。
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