2022 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育のSTEM分野における女子の希少性に関する計量社会学的研究
Project/Area Number |
20K13904
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
白川 俊之 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (40805313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高等教育 / 専攻分野 / STEM / ジェンダー / 社会階層 / 親子ペアデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は性別専攻分離の発生に社会階層がどのように関係しているかを明らかにするために、引き続き「高校生と母親調査,2012」より得られたデータを用い分析を行った。教育に関する格差を検討するうえで、人々の出身階層はジェンダーと並ぶ重要な要因だが、男女が異なる専攻分野に進学する傾向に、出身階層がどう関係しているかは、あまりよくわかっていない。出身階層の操作的定義にはさまざまなものがあるが、本研究では親の学歴に注目し、男女の専攻分野の選択に対し、親の学歴が与える影響を実証的に確認した。
主要な分析結果としては、(1)女性の場合、両親とも大学以上であると高等教育の専攻分野が人文系になりやすい、(2)親学歴は男性の専攻分野の選択には強く影響していない、といったことが明らかになった。女性が人文系の専攻分野にすすむ傾向があることはよく知られているが、そうした傾向を強めているのは、親大卒層の女性の行動であるといえる。男性の結果と合わせれば、専攻分野の性別分離が顕著に生じているのは、高い階層の出身者のあいだであるということが、データにより示された。
研究期間全体を通じて性別専攻分離がどのようなメカニズムにより生じるかを探ってきたが、個人レベルの要因としては職業に関する意識と異なる専攻分野を選択した際の成功の主観的な見通しにより、男女間の専攻分野選択の格差は、半分以上を説明できることを明らかにした。また、進学に関する選択を行う高校生本人の背後にいる親の意識も含めれば、子どもに習得させたい知識やスキルに関する母親のもつ期待には強いジェンダー・バイアスが生じており、知識・スキル形成期待における子どもの性別による差は、高校生の専攻分野の選択と非常に強い関連をもっている。そして、母親のこうした意識は一般的な性別役割分業意識とは、まったく相関していないことも確認された。
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