2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on effects of grade promotion for children with special needs in Vietnam
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20K13918
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Research Institution | Biwako-Gakuin University |
Principal Investigator |
白銀 研五 びわこ学院大学, 教育福祉学部, 講師 (70826213)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベトナム / 和入教育 / 教育課程 / 評価 / 制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度では、ベトナムの教育にかかわる近年の法制度の変化および国内と国際機関の統計調査に基づく障害のある子どもの教育状況を整理し、以下3点の知見を得た。 1つ目に法制度について、和入教育は障害のある子どもだけではなく教育制度全般にわたって教育のあり方を象徴的に示す教育として位置づけられると同時に、障害のある子どもの教育形式として実効性が重視される傾向にあることがわかった。 2つ目に「普通教育課程」について、評価にかかわる規定を精査したところ、教育課程としての一貫性とその体系性が重視されながら、より全人的な発達の観点を取り入れた評価観点が設定されるようになったことがわかった。とくに2006年の「普通教育課程」では、第1学年から第5学年まで各学年で身につけるべき能力や技能が、教科や活動ごとに定められていたが、2018年の「普通教育課程」では、初等教育から中等教育まで一貫して「自主的・自学的能力」、「交流・協力能力」、「問題解決力及び創造的能力」などの観点が設定されるようになった。 3つ目に障害のある子どもの就学状況について、2018年に公表された全国的な調査では、障害のある子どもは表向きは障害のある子どもを受け入れていない学校にも就学している状況があった。また、農村部や貧困層の子どもほど、日本の特別支援学校及び特別支援学級に相当する専別学校や専別学級に在籍するのではなく、通常の学校や学級に在籍する傾向があった。さらに、国際機関の調査では低学年であるほど留年率が高くなる傾向が確認されていることをふまえると、学校で和入教育が広がる一方で児童生徒のあいだには就学状況の違いが従来とは異なるかたちで現出している状況が推察された。 なお、これらの知見の一部は、『地域連携研究センター年報』の資料として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記区分は、主に世界的な感染症の広がりで予定していた予備調査がおこなえなかったことによる。しかし、今年度は文献調査に重点をあてた研究方策をとるなかで、次の2つの要因が重なったことで、比較的順調に研究を進めることができた。1つは、ベトナムで教育計画や統計資料のオンラインによる公開が進められたことと、もう1つはベトナムの障害のある子どもの就学状況を含めた政府の調査結果が公表されたことである。このため、予備調査を延期せざるを得ない状況になったものの、とくに制度分析や就学状況の動向調査については一定程度の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、研究を進めるにあたっては、ベトナムへの渡航可能になった段階で速やかに調査を実施できるように準備を進めながら、入国が難しい状況が長期化することにも備えて次の2点について研究方策を修正する。1点目は、学校の方針ではなく、学年による進級の違いに焦点をあてることである。研究開始時点では学外教員の受け入れに着目した学校の方針を検討することを想定していたが、学校の受け入れ方針にかかわらない就学状況が見えてきた一方で和入教育としての就学のなかで地域や階層による違いがあることもわかってきた。そこで、学校ごとに事例を収集するのではなく、進学に一定の傾向がある学年に着目した調査をおこなうことで、就学に違いを生じさせる要因を分析できるようになる。これにより、より実証的なかたちで和入教育における進級の機能を明らかにできると考えた。2点目は、方法1にかかわって、「普通教育課程」の評価項目における児童生徒の資質・能力の規定のされ方がどのように変化したのか、歴史的な観点から分析することである。ベトナムでは近年、オンラインによる情報公開が進んだことと併せ、教育行政官などへの聞き取りをオンラインで進めることでより効率的に調査研究をおこなうことができる。また、進級をめぐる評価項目の変化という歴史的な観点を導入することで、通時的な進級の機能に迫ることができると考えた。
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