2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on effects of grade promotion for children with special needs in Vietnam
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20K13918
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Research Institution | Biwako-Gakuin University |
Principal Investigator |
白銀 研五 びわこ学院大学, 教育福祉学部, 准教授 (70826213)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベトナム / 教育課程 / 評価 / 進級 / 言語教育 / 和入教育 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度から方針を修正し、進級をめぐる評価基準の特徴が具体的に示された教科に焦点を当てた。近年、ベトナムでは教育課程の改革が進み、英語を中心とする外国語が必修化されると同時に、ベトナム語の学習ではより詳細な評価基準が示されるようになった。一方で、特別なニーズのある子どものなかには、言葉の発達に課題を抱える子どもがおり、評価基準の変化によって特別なニーズのある子どもの教育が影響を受けている可能性がある。これをふまえ、2021年度の研究では、特別なニーズのある子どもの問題を背景に据えながら分析し、言語教育の目標設定において文化的素養と道具的技術という共通性を見出した。 まず、文化的素養としては、これまでの言語に込められた文化的な理解よりも、言語を用いて自然の事物や人間社会の理解が一層強調されることがわかった。2018年から順次施行されている「普通教育課程」の「ベトナム語」で、「自然、家族、祖国」についての理解が第1の目標として掲げられている。また、「英語」では、「祖国、人間および世界」を理解として「文化的基盤」を培うことが謳われている。 また、言語教育を道具的技術の習得という視点で見れば、「ベトナム語」での4技能の獲得は「読む、書く、話す、聞く」の順で示されている一方で、英語では、「聞く、話す、読む、書く」の順で示されている。初等教育では特に「聞く」ことと「話す」ことを中心とした「簡単なコミュニケーション」が強調されている通り、評価の観点に違いのあることがわかる。しかし、「ベトナム語」でも発表や相手の意見を理解する内容が増えており、読み書きだけではなく、より対話的な「コミュニケーション」を重視しようとする傾向がみられる。 こうした変化を受けて、特別なニーズのある子どもの教育を考えたとき進級の評価では、文化と技能の観点に関する教員の解釈を問題となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の理由としては、主に感染症対策の長期化が影響を与えた。ただし、2021年度では、調査の対象を言語教育に絞ったことで教育課程の改革をふまえた進級制度の分析を一定程度進めることができた。特に、ベトナムの主要言語の教科である「ベトナム語」と新たに必修化された教科である「英語」の内容について、共通点を整理することで、特別なニーズのある子どもの進級において生じる問題を具体的に想定することができた。ただし、当初の予定から実地調査ができない状況が続いているため、学校での進級や評価が実際にどのようにおこなわれているのかについては、十分な資料を集められていない。今後、早急に実地調査をおこない特別なニーズのある子どもの教育における進級制度の特徴を明らかにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究では、言語教育に着目しながら、特別なニーズのなかでも発達障害をはじめとする障害のある子どもに焦点をあて、以下3点の作業をおこなっていく。 1つ目として、コロナ禍において生じた特別なニーズのある子どもの学習状況の変化を把握する。本研究で調査をおこなうにあたって、直接的にコロナ禍の影響を調査対象としているわけではないものの、分析するうえで除外すべきその影響を把握しておく必要がある。特に障害のある子どもは、学校だけではなくセンターをはじめとする施設を利用することで就学機会を得ていることから、学校での学習がどの程度保障されてきたのかを確認する必要がある。 2つ目として、「普通教育課程」の改革で生じた就学機会の違いを調査する。「普通教育課程」の改革ではかつてあった複数の段階的な教育課程ではなく、一律に目標や内容が詳細に定められるようになった。その一方で、文化的素養として文法的な理解を促す活動から作品を鑑賞する活動まで、一緒に教育する活動が一律におこなわれているわけではないことが予想される。こうしたことから、進級にかかわっては「コミュニケーション」から文法的な理解、文化的素養としての知識までどのような重みづけがなされているのかについて調査していく。 3つ目として、評価に関する教員の思考様式を調査する。規定として定められている範囲のなかで教員はどのような理念や方針のもとに進級の可否を決定しているのかについては、これまでほとんど調査されてこなかった。これをふまえ2022年度では学校教員を対象とした聞き取り調査を実施する。ただし、学校の実情に応じて自由回答形式によるオンラインを含めた準備をおこなっていく。 上記3つの視点に焦点をあてて引き続き和入教育の実施における進級の機能について調査、分析を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)