2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13924
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
有江 ディアナ 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (50816527)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子ども / 学習権 / 移民 / 外国人 / スペイン / 義務教育 / 子どもの権利条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
スペインでは、外国人の子どもたちの教育についての権利は、形式的に法制度上保障され、移民背景の生徒らへの教育施策も講じられてきた。しかし、外国人や移民背景の子どもの留年率や早期離学率が高く、進学や労働市場に進むための中等義務教育修了資格を取得していない若者も多く、実質的に義務教育段階における同権が十分に果たされていないことが大きな課題である。 本研究では、スペインの外国人、移民の子どもの学習権保障のために、特に義務教育段階における施策の実態を分析し、問題点を明らかにする。具体的に、スペインにおけるこれらの子どもに対する教育施策の形式的な制度の根底にある理念・考えの整理に加え、実質的にその教育施策の効果の実態を検証する。初年度である2020年度は、先行研究の整理を行ったうえで、現地調査を予定していたが、COVID-19の影響に伴いかなわず、関連の文献調査や現地の公的な情報やデータの収集から、関連の重大な問題を検証した。 スペインの法枠組み上、国籍及び在留資格を問わず教育についての権利が認められ、また義務も課せられるというのが通説である。在留資格がなくとも、住所が確認できる書類の提出によって入学が認められることは、一部の自治州の通達や現場の学校関係者から確認している。しかしながら、中央教育行政の管轄である自治都市メリーリャにおいて、行政が認めず、また司法判断においても行政の判断の違法性が認められず、現在は国際連合で採択された子どもの権利条約の条約履行監視機関にその見解が要請されている。また、これまでの研究によって、中央政府における度重なる教育関連の法改正の裏側に、二大政党の教育の理念、方針の違いが明らかとなり、それが外国人、移民の子どもの教育施策との関連において、各自治州にどのような影響を与えてきたのか、その分析も途中段階ではあるが、2021年夏に学会での報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である2020年度は、先行研究の整理及び関連の文献調査を行ったうえで、事前の仮説や質問票を作成の上、教育施策を策定する側と教育現場で実行する側の捉え方の乖離、問題点を解明するために、教育行政関係者と学校関係者に対し政策に関する聞き取り調査を行う予定であった。しかしながら、COVID-19の世界的流行に伴い、現地調査を行なうことがかなわず、この点は本研究がやや遅れている一因である。
他方、文献調査及び先行研究の整理に加え、2019年末から2020年春に問題になっていた、中央教育行政管轄である一自治都市メリーリャにおいて、非正規外国人の子どもの義務教育へのアクセスが否定されたことの検証を行った。国内での司法判断があった後、子どもの権利条約の履行監視機関である子どもの権利委員会に見解を求めている状況にある。2020年度は、このことの重大性から、所属センターの一般市民向けの季刊冊子にその状況を紹介した。また、最も普遍的な人権条約とされる子どもの権利条約における非正規外国人を含む外国人の教育についての権利を検証し、この分析結果は、2021年の夏には論文として刊行される。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、メリーリャの動向にも注目しながら、スペインのその他の地域、自治州において二大政党の教育の理念、方針がどのように反映され、それが外国人、移民の子どもの教育の施策に対しどのように影響を及ぼしているかについて分析していく。
本年度前半は、文献調査を中心に進めていく予定であり、その途中段階での研究成果については、学会において研究報告を行う予定である(2021年6月)。また、本年度後半は、現状が改善されることを期待し、現地での教育関係者(教育行政及び学校現場)への聞き取り調査を予定している。同時に、秋頃にはその実行可能性を判断し、一部関係者へのオンラインによるインタビュー等を同時に検討していく。
今後の世界情勢も踏まえながら、計画で予定していた現地での聞き取り調査の手法も検討しながら、可能な範囲で調査等はオンラインでも進めていきたい。特にメリーリャの動向との関連では、現地の非正規外国人の子どもらの学習権の支援団体やこの件について担当した現地の弁護士団体から実態を把握していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度のCOVID-19の世界的流行に伴い、日本国内における緊急事態宣言による移動が制限され、予定していた学会への報告と参加は、学会側の中止が相次ぐとともに、オンライン開催に変更になった学会もある。また、初年度後期に予定していた、2週間程度のスペインでの現地調査もかなわなかった。スペインは、2020年3月より警戒事態宣言が発動され、6月まで続いた。また、2度目の警戒事態宣言は、同年10月から2021年5月までに設定された。日本よりもさらに厳格な移動制限、国内での地域間への移動にも制限があったため、2週間の隔離期間を経ても移動は困難と予測できたため、現地調査は断念した。これらの費用は、初年度の旅費に計上していたものであるが、使用しなかった。
そこで、2021年度は、引き続き、先行研究の整理と文献調査を行うとともに、現状が改善されることを期待し、2月・3月に現地での教育関係者(教育行政及び学校現場)への聞き取り調査を予定している。同時に、秋頃にはその実行可能性を判断し、一部関係者へのオンラインによるインタビュー等を同時に検討していく。
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Research Products
(5 results)