2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13924
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
有江 ディアナ 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (50816527)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 子ども / 学習権 / 移民 / 外国人 / スペイン |
Outline of Annual Research Achievements |
スペインの法枠組み上、国籍及び在留資格を問わず教育についての権利が認められ、就学義務も課せられるというのが通説である。しかしながら、自治都市メリーリャ(アフリカ大陸北部にあるスペインの飛び地)において、隣国であるモロッコとの交通網に関する協定に伴う特有の問題から、多くの非正規外国人の子どもらは学校に通えずにいた。市民団体や弁護士協会、そして子どもら自身の活動により2018年に可視化され、2021年5月に大きな動きがみられた。その背景にあるのは、国内の世論の動きと国際的な法枠組みとしての子どもの権利条約及びその第三議定書である。 子どもの権利に特化し、196ヶ国の締約国を擁する子どもの権利条約には、3つの選択議定書がつくられており、そのうちの2011年の個人通報手続に関する第三選択議定書では、子どもの権利条約/選択議定書に認められている権利を侵害された個人が、条約機関に直接訴え、救済を求めることができる。スペインは子どもの権利条約及び同議定書に批准しており、就学が認められていなかった子どもら(その保護者)が通報したことによって、条約機関である子どもの権利員会は「見解」を採択し、教育についての権利(第28条)への違反をはじめ、差別禁止(第2条)や子どもの最善の利益(第3条)との関連でも違反を認定した。スペイン政府は、この判断を重く受け止め、就学していなかった子どもらの学校への入学を認めたが、就学年齢ではない子どもらの状況は変わっていない。 子どもの権利条約における外国人の教育やスペインの同個人通報事案の状況については、2021年発行の論文と2022年発行予定の論文に整理し、発表している。この他、スペイン国内の教育関連法の度重なる改正と各自治州の状況に関する分析やスペインの2020年以降の新型コロナウィルスにおけるスペインの教育状況等について学会報告と論文や書籍の執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度及び2年目に行う予定だったスペインでの現地調査は、新型コロナウィルスの影響に伴い、行うことができなかった。ただし、文献調査を進めながら、オンラインにより関係者を招聘して研究会を開催することによって、物理的に現地に行くことができなかったものの、実態の把握のためのヒアリングを進めることができた。その結果、初年度に明らかにする予定だった一部地域(スペイン飛び地)の研究を進め、これに関連した論文を執筆することができた。また、2020年以降新型コロナウィルス禍におけるスペインの教育の状況を考察していく中で、脆弱な立場に置かれる非正規外国人の子どもの教育、特に義務教育ではない場合の問題についても、学会報告、論文や書籍などによって若干ながら発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の本年度は、引き続き文献調査を行いながら実態調査(オンラインでのヒアリング、現地調査)を実施する予定である。 文献調査では、2021年度の分析で明らかになった課題を注視しながら、スペイン国内の法枠組みにおける補償教育とインクルーシブ教育の概念及び発展について整理する。また、これらの教育における外国人・移民教育の政策の位置づけについて検討する。 実態調査では、現地調査の準備をしながら、感染症の拡大状況及び国際情勢の動向により現地調査が困難な場合には、オンラインによるヒアリング、可能ならばミニ会議を開催し、実態の把握を試みる。
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Causes of Carryover |
国内旅費及び外国旅費に計上していた出張費用は、新型コロナウィルスの影響により、1年目・2年目は、現地調査を実施することが不可能だったため、国内・海外の旅費を使用することができなかった。文献調査とオンラインによるヒアリングに必要な経費のみを使用した。 本年度は感染症及び国際情勢の動向を見ながら、現地調査を予定している。この他、文献調査も行うため、海外からの取り寄せの書籍に2021年度の未使用額を有効的に使用予定である。
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Research Products
(6 results)