2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13924
|
Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
有江 ディアナ 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (50816527)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 学習権 / 移民 / 外国人 / 子どもの権利条約 / スペイン / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの2年間の研究によって、スペイン国内法制とその実態の乖離が明らかであることを確認した。そこで、2022年度は、スペインにおいて外国人の子どもの学習権に関連する国内法と実態(教育行政・教育現場)の乖離が見られる地域(自治州)において現地調査を実施した。現地の弁護士協会と非政府組織(NGO)に同行し、活動の参与観察を行い、教育当局関係者への聞き取り調査を行なった。 今回訪問した地域(自治都市:セウタとメリーリャ)で問題になっている外国人の子どもの教育問題といえば大きく2つある。1つは、在留資格のない非正規外国人で、モロッコ国籍である子どもらに対する公教育へのアクセスの否定である。もう一つは、中央アフリカ諸国出身者を中心とする、保護者の付き添いのない子どもが、一人でスペインにやってくる問題である。 前者については、2021年5月に採択された子どもの権利条約の履行監視機関である子どもの権利委員会の「見解」によって、状況は大きく変化した(成果物として論文等を発表)。ただし、就学が可能になった子どもたちがいる一方で依然として就学年齢を超える子どもの後期中等教育へのアクセスが必ずしも保障されないこと、また、就学ができたがその親・保護者に対して、出国命令が発布されるなどの事態を確認した。また、後者については、義務教育段階の子どもであることが自明である場合は、国内法制に基づき保護される(救助、受入れ、衣食住の提供、身分/保険証登録~就学、この他、未成年後見人の選任、庇護申請の案内等)。しかし、主張する年齢や身分証明書に書かれている年齢に比べ、体が成熟している場合は、子どもとしてみなされず、本人の同意なく年齢検査が行われ、大人と同様の扱いを受けるため、大人と一緒に収容され、必要な教育のみならず子どもとしての保護が受けられないとして、子どもの権利委員会に個人通報されている事案が複数ある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度及び2021年度は、感染症の影響に伴い現地調査は断念したが、文献調査を進めながら、オンライン会議等を開催することによって、物理的に現地に行くことはできなかったものの、実態の把握のためのヒアリングを進めることができた。また、これらに関連した論文等を執筆した。 2022年度には、これまでの研究と構築した現地ネットワークにより、現地調査を行うことができた。スペインの中でも特殊な地域について、保障されているはずの学習権の実態を探り、新たな課題も見えてきた。また、文献による研究も進めながら、2022年度も論文執筆等を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、引き続き文献調査を行いながら実態調査として関係者へのヒアリングや現地調査を実施する予定である(ただし、現地の国内情勢及び国際情勢の動向は注視して調査の実施を判断する)。 本年度は、引き続き特殊な地域(自治州)、スペインの離島に着目する。これらの地域(自治州)では、2割弱が外国人生徒(日本でいう外国籍児童生徒)であり、父母のどちらかが外国人である割合が3分の1~およそ半分の地域(自治州)であり、教育の課題がみられる。また、アフリカ諸国からの保護者の付き添いのない外国人の子どもを受け入れている地域(自治州)では、教育を受けるまでの過程において、子どもの保護との関連の問題もみられる。
|
Causes of Carryover |
3年目の2022年度はようやく現地調査を実施することができた。これまで、文献やヒアリングによって得ていた情報を実際に確認することができた。 今回「次年度使用額が生じた理由」として、欧州行きの航空運賃及び現地宿泊先等の価格高騰化、また日程的に、他の地域への再度の現地調査が不可能だったため、2022年度の未使用額分は、2023年度に実施する現地調査の際には、有効的に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)