2020 Fiscal Year Research-status Report
「平成30年7月豪雨」における被災地の学童保育機能の復旧と再開のプロセスの記録化
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20K13927
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 瞬 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (00740937)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 学童保育 / 放課後児童クラブ / 平成30年7月豪雨 / 安全対策 / 危機管理 / 記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今、各地で地震や気象災害が多発するとともに、放課後児童クラブにおける組織的な安全対策や危機管理の充実を求める声が高まっている。だが、先行研究は、防災意識の醸成や緊急時の対応を求めるものに留まっている。本研究は、気象災害に伴い機能不全に陥った地域における放課後児童クラブの被災状況と「災害発生時の対応」、「一時的な保育機能の復旧」から「学童保育所の再開」のプロセスについて時系列に沿って明らかにするものである。また、その結果を参照可能な記録としてデータベース化し、波及させるフォーラムの開催を通じて、放課後児童クラブの危機管理体制の在り方を検討することを目的としている。 具体的には、自身も当事者として経験した「平成30年7月豪雨」において、被害の大きかった岡山県と広島県の被災地域を対象として、1)放課後児童クラブにおける被災状況と「災害発生時の対応」の解明、2)自治体担当課や専門団体による被災した放課後児童クラブへの支援実態の解明、3)「一時的な保育機能の復旧」から「学童保育所の再開」のプロセスの解明、4)復旧・再開のプロセスマップの作成のためのワークショップ型研修の実施と検証を計画している。 2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み、当初の予定を変更し、①学童保育における安全対策・危機管理に関する先行研究の整理、②「平成30年7月豪雨」において被害の大きかった岡山県と広島県の市町村における放課後児童クラブを対象に質問紙調査を実施した(調査時期:令和3年1月)。①では学童保育における安全対策・危機管理に関する研究そのものや大規模災害への学童保育の組織的な対応の記録が不足していることを明らかにした。②では記録的な災害を経験していても、必ずしも十分な記録が残されておらず、特に、地域的な被害はあっても直接的な被害を受けていない場合はその傾向が強いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染状況により、研究計画の見直しが必要となったものの、先行研究の整理を十分に行うことができた。その結果については、所属機関の紀要において「学童保育における安全対策・危機管理に関する研究の動向」として整理した。 また、対象地域におけるアンケート調査から、放課後児童クラブにおける被災状況と「災害発生時の対応」について試行的な調査を実施することができている。これを受けて実施する予定であったヒアリング調査については、学童保育所の実践が煩雑になる3月を避けて実施することになったため2020年度内の実施に至れていないものの、2021年4月以降、オンラインでのヒアリング調査を実施している。これらの調査結果については、2021年6月に開催される日本子ども社会学会第27回大会にて報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究の検討を踏まえると、被災状況の把握や復旧・再開に向けた支援状況や、再開から現在までの防災に関する取り組みについて、学童保育行政、支援団体、学童保育所によるネットワークとして捉え、そこで生じていた対応と支援のダイナミクスを描きだすことが重要である。そこで、2021年度は、ヒアリングの対象を広げ、自治体担当課や学童保育連絡協議会等への調査を実施する。 なお、昨年度においても「放課後児童クラブにおける被災状況と「災害発生時」の対応の解明」を目指し、質問紙調査を実施したものの(調査時期:令和3年1月)、災害発生時における放課後児童クラブでの対応等に関してヒアリング調査を行うことは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等もあり、すべての放課後児童クラブにて実施できていない。そのため、2021年度は、「自治体担当課及び専門団体による被災した放課後児童クラブへの支援実態の解明」を目指す基礎自治体及び学童保育連絡協議会へのヒアリング調査と併せて、引き続き学童保育所へのヒアリング調査も継続する(調査時期:令和3年4~12月)。 なお、調査方法については、当面はオンラインでのヒアリング調査の手法をとる。だが、復旧状況等については現地でのフィールドワークを含めて把握をしたいと考えているため、感染状況を踏まえて、現地でのヒアリング調査を実施することも視野に入れる。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み、当初の予定を変更したため、フィールドワークとヒアリング調査を実施することが困難であった。そのため、これに関わる旅費や謝金等の予算を使用することができなかった。 2021年度においても、感染状況を鑑み柔軟に対応する。なお、状況の改善が見られれば、積極的に現地でのフィールドワークとヒアリング調査を実施する。
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