2020 Fiscal Year Research-status Report
「生態想像力」を軸とした幼小接続期のESD実践理論と実践支援ツールの開発
Project/Area Number |
20K13951
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
山本 一成 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (70737238)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 生態想像力 / 持続発展教育(ESD) / 自然体験 / 幼児教育 / 生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幼児期から児童期にかけての生態想像力の特徴や発達的変化を踏まえたESD実践理論を構築し、その実践を支援するツールを開発することを目指して行われた。今年度は文献研究を中心にしつつ、教育実践を行う研究協力者との共同研究を組み合わせるかたちで研究を行った。 まず、生態想像力概念の精緻化を行うとともに、生態想像力の発達に沿った教育実践の事例研究を行うことによって、幼児期と児童期を接続するESD実践の方向性について検討を行った。その結果、幼児教育においては生命と出会う体験の深さが重要な意味をもっており、そのことが自然や環境のリアリティを確かなものとすることに関わっている可能性が示唆された。それは、児童期以降の科学的知識や生態学的知識に伴う生態想像力よりも、美的経験や共感的経験のなかに働く想像力である点に特徴があり、幼児の生活のなかで蓄積され、生物に対する愛着や見方を深める土台となるものである。また、このことは、幼児が他の生きものと十分に関わる経験を得ることを「子どもの権利」として捉える可能性を導くものであり、幼児期のESD実践理論の新たな可能性を開くものであった。 このような「生きているものどうし」のリアリティを伴った想像力を土台とすることによって、児童期以降のESDが知識の学習に留まらない実質性を持ったものとなることが考えられる。特に生活科の授業実践においては、自分事として自然や環境について学んでいくことが目指されるため、今後の研究では美的経験や共感的関係に根差した「生きているものどうしの想像力」を喚起する方略を含めて、実践支援ツールの開発を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、文献研究とフィールド調査を中心に進める予定であったが、今年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、学校園でのフィールド調査が大幅に制限されることとなった。文献研究については順調に推移しているものの、そこから得られた理論を実践との往還のなかで精緻化していくという点に障害があり、研究に遅れが見られている。また、同様の理由により、当初目指していた研究協力者のネットワーキングについても進んでいない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
学校園の現場が新型コロナウイルス対策に追われる状況であるため、フィールド調査を行うことが難しく、また教育実践者との共同研究についても現場に大きな負担がかかる状況である。そのため、感染症の状況が落ち着いた時期を見計らって集中的にフィールドワークを行い、研究の遅れを取り戻していく必要がある。研究協力者とのコミュニケーションや情報交換についてオンラインツールを活用するなど、フィールドワークが不可能な時期にも研究を進められる工夫を行っていく。
|
Causes of Carryover |
遠隔地でのフィールド調査を行っていないため、旅費が支出されていない。また研究の進捗に併せて実施する予定だったシンポジウム等も計画を延期している。今年度は新型コロナウイルスの感染状況を見つつなるべくフィールド調査を実施していく予定であるが、場合によっては旅費として予定していた予算を支援ツールの作成やシンポジウム等の予算に活用することも検討する。
|
Research Products
(1 results)