2020 Fiscal Year Research-status Report
音楽科授業における子ども間の協同の成立過程に関する教育実践学的研究
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20K13972
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
兼平 佳枝 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50613668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協同 / コミュニケーション / 問題解決 / リーダー=フォロワー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、音楽科授業における子ども間の協同(cooperation)の成立過程について、教育実践学的な研究方法によって明らかにすることである。 第1年次は、デューイにおける協同(cooperation)概念に関する理論研究を中心に行い、そこで得た理論的視点を基に、子どもの協同の成立を実現する音楽科授業モデル開発に向けた予備実践を行う附属学校で実施する予定であった。まず、協同に関する先行研究のレビューを行ったうえで、デューイの『民主主義と教育』を中心に、『学校と社会』『経験と自然』『公衆とその諸問題』を概観し、社会、共同体、コミュニケーション、教育との関連において、協同(cooperation)が「共通の目的の達成のために、自分が為すべきことを感じ取って、相互の立場や役割を柔軟に交代し相互の期待や要求に反応するリーダー=フォロワー関係」ととらえられることを明らかにした。そして、そこで得た理論的視点を基に、芸術的経験としての音楽表現活動における子ども間の協同がどのように成立しているのか、事例分析を行った。 研究の結果、芸術的経験としての音楽表現活動における子ども間の協同は、表現したいイメージと鳴り響く音や音楽から醸し出される質との関係性を共通問題とした、集団による問題解決の過程において、共同者相互のリーダー=フォロワー関係として成立していることがわかった。この研究の成果については論文にまとめ、現在、投稿中である。 以上、理論研究で明らかになった協同については、子どもの具体の姿を通してその成立の様相を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
デューイの協同概念に関する文献研究、および、事例分析を通しての協同の成立の様相に関する研究は、おおむね順調に進めることはできた。発表予定であった学会がすべて、新型コロナウィルス感染防止の観点から中止となったため、学会発表はできなかったが、研究成果については論文にまとめることはできた。 そこでの理論研究の成果を踏まえ、研究授業の計画・実践を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、学校現場では音楽科の授業そのものの実施において、活動内容に制限も大きく、現在に至っても厳しい状況が続いている。それに加え、本研究は、子ども間でのコミュニケーションを重視した授業展開を想定するものであるが、学校現場でも様々な場面でソーシャルディスタンスの確保が求められる中で、授業中に子ども同士が顔を突き合わせて話し合いをする場面を作ることが難しいという現状があった。その影響で、研究協力者となる附属学校教諭も、日々の子どもたちの学校生活の安全を第一に考える中で多忙を極め、詳細な授業の計画の打ち合わせ、および、研究授業参観などがままならぬ状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、3年計画の2年次となる。2021年度は、昨年度の研究成果を踏まえたうえで、附属学校教諭の協力のもと研究授業を計画・実践していくと共に、協同概念にかかわる理論の精緻化を図る。そのため、以下の2点に取り組む。 1つめは、今年度の理論研究の成果を踏まえ、コロナ禍でも可能となる活動の方法を、研究協力者となる附属学校教諭と共に模索し、そのうえで、子ども間での協同を実現する授業を計画・実践する。そこでは、様々な音や音楽の教材化及び教材研究を行う。さらに、授業における子ども間のコミュニケーションを促進するうえで、整備したiPadの活用も視野に入れた授業展開を検討していく。そして、実際の子どもの姿を通して協同の成立の様相を検証することで、子ども間の協同を成立させるための音楽科授業モデル作成に向けての手がかりを得る。 2つめは、実践研究と平行させ、昨年度行った理論研究において課題として残った、協同・探究・共感の三者のかかわりについて明らかにすることである。これについては、継続的に文献研究を進めていく。ここで得た知見を、授業モデル作成の際に反映させていく。 2022年度は研究最終年度となるため、2年間の研究成果を踏まえ、授業モデルを作成し、その妥当性について検証する。
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Causes of Carryover |
発表予定していた学会がすべて中止になったため、旅費が発生しなかった。また、附属学校での授業実践ができなかったことで、授業記録の整理のための人件費も発生しなかった。今後は、研究協力者の協力を得て実践可能な活動に合わせた教材・教具を整備し、今年度の研究成果を踏まえた授業実践を行っていく。
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