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2021 Fiscal Year Research-status Report

算数科における「交渉する力」を育成する学習指導モデルの開発

Research Project

Project/Area Number 20K14002
Research InstitutionShimane University

Principal Investigator

下村 岳人  島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (90782508)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords数学的交渉 / 数学的知識 / 発話行為論 / 算数科授業 / 合意形成
Outline of Annual Research Achievements

本年度の研究実績は次の通りである.
まず,これまでの研究成果をもとにすることから,2021年9月に神戸大学大学院人間発達環境学研究科に博士論文として提出し,博士(教育学)の学位を得た.本論文は,算数科授業を子どもたちが合意を得ながら進展する営みであると捉え,そのような合意は自然発生するものではなく,教室の数学のディスコースに参加する者の相互の努力に基づく交渉を要する点を指摘した.そして,その交渉がどのような特徴が有することによって,子どもの認知に影響を与えたり,教室での合意に至ったりするのかについて考察したものである.
より具体的には,Ausin,Searleによって展開された発話行為論を理論的視座とすることから,子ども同士の数学的交渉でみられる発話の意図を捉えるための記述枠組みを構築したことが,本研究の大きな成果である.また,その記述枠組みをもとに,小学校高学年の分数における算数科授業を分析対象とすることから,そこでの数学的交渉の様相について分析を行った.その分析結果をもとに,子どもの数学的知識の構成に影響を与える,もしくは教室で合意された知識が生成されるまでに求められる数学的交渉の特徴について4点を指摘した論文となっている.
また研究成果に基づき,算数科授業における合意形成の必要性については学校現場にも広く発信し,2校の小学校では合意形成を研究主題に掲げながら研究推進している状況にあり,そこでの成果についてもまとめてきた.
さらに本年度は,研究協力者とともに分数概念の形成過程に係る新たな調査を開始した.そして,その調査結果を博士論文で構築された発話行為論に基づく数学的交渉を捉えるための記述枠組みを用いることから分析を行い,その結果について日本科学教育学会で公表した.現在は,その発表内容に新たなデータを加え分析したものを論文にまとめ,投稿中の状態にある.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究の目的は,「交渉する力」を育成する学習モデルを開発することである.本目的の達成のために立てた研究課題の遂行状況と照らした際には,本年度の研究計画は概ね予定通り進めることができたと考えられる.以下がその理由である.
本研究の目的達成のために立てた研究課題は,第一に,子どもの交渉の様相を捉えるための記述枠組みを構築すること.第二に,交渉する力を育成する学習指導モデルを開発するとともに,その妥当性や有効性を事例と共に明らかにすること.の2点である.
このうちの第一の課題については,発話行為論に依拠することから記述枠組みを構築し,幾つかの授業分析を通すことからその妥当性についての検証を行い,その成果を博士論文としてまとめることができた.今後も,その信頼性の検証を繰り返すことは必要となるが,記述枠組みの構築は一定認められているものと考える.
第二の課題に関しては,子どもの交渉する力を適切に把握する方法及び,交渉する力を育成することを志向した学習指導モデルの開発が求められる.この点に関しては,2021年から学校現場と連携しながら取り組んできている.またそこでは,第一の課題の遂行において構築された記述枠組みを,学校現場の先生にも使用しやすいよう作り直したものを用いながら研究を進めることができている.学校現場での検証が行えていることは本研究を進展するうえでの大きな推進力となっている.
ただし,新型コロナウィルス感染症の影響により,2020年度は思ったように調査が行えなかったのも実際である.2022年度は,2020年度での遅れも踏まえ,より学校現場での調査を実施することから学習指導モデルの開発に尽力する.

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の推進方策は次の3点である.
第一に,研究協力者による協力のもと調査を実施することである.本研究の進展には,学校現場での調査は欠くことができないものである.また,そこでは授業を記録するうえでの多くの機材が必要となるが,科研費のおかげもありそれらの機材は揃いつつある.今後はそれらの機材を使用することから,授業におけるグループ学習の様子を詳細に捉えることから,交渉する力の実態を把握するとともに,その育成を目指した学習指導モデルとして練り上げていきたい.
第二に,研究成果の公表である.現在も研究成果については随時をまとめながら,論文として投稿しており査読段階にある.今後はさらに研究成果をまとめることから,学会発表及び論文投稿を行うことから広く発信していきたい.また,今年度は国内学会にとどまらず,国際学会でも発表し,海外にも本研究の成果を伝えていきたい.
第三に,学校現場に対する啓蒙活動である.現在,学校現場の先生,島根県教育委員会及び鳥取県教育委員会と連携しながら,算数科において合意形成に係る授業場面について考察した書籍を7月に出版予定である.そのような書籍も学校現場に紹介することから交渉する力の啓蒙活動に努めると同時に,広く意見を聴取することから今後の調査の原動力としていきたい.

Causes of Carryover

本年度は,研究成果を公表する機会として,複数の国内及び,国際学会を予定しており,その旅費に多くの予算を計上していた.
しかし,新型コロナウィルス感染症の影響で予定していた学会全てが,中止もしくはオンラインでの開催となり,予定していた旅費を使用することがなかった.また,学校現場での調査に関しても,先と同じ理由から実施できないものがあった.
そのため,本年度は当初予定していたよりも,学会参加の機会と調査回数が増えることが想定されるため,その部部へ充当したいと考えている.

  • Research Products

    (4 results)

All 2021

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 算数科授業における数学的知識の構成と協定に関する研究 -発話行為論を視座とする数学的交渉の分析-2021

    • Author(s)
      下村岳人
    • Journal Title

      神戸大学大学院人間発達環境学研究科 博士学位論文

      Volume: - Pages: 1~235

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 量分数の概念形成に影響を与える数学的交渉の特徴2021

    • Author(s)
      下村 岳人
    • Journal Title

      日本科学教育学会研究会研究報告

      Volume: 36 Pages: 77~80

    • DOI

      10.14935/jsser.36.2_77

  • [Presentation] 合意形成の力を育む算数科授業の創造-比例の学習でのグラフへの価値づけの場面から-2021

    • Author(s)
      井川洋輔・下村岳人
    • Organizer
      日本数学教育学会 第103回全国算数・数学教育研究(埼玉)大会
  • [Presentation] 見いだし説明する過程を重視した算数の授業:子どもが見いだし説明するうえでの脅威しの役割-2021

    • Author(s)
      梶谷典弘・下村岳人
    • Organizer
      日本数学教育学会 第103回全国算数・数学教育研究(埼玉)大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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