2020 Fiscal Year Research-status Report
映像的触覚知の認知科学的検証による美術教育の映像メディア指導法開発
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20K14004
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐原 理 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (80445957)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 映像メディア / 映像的触覚知 / 美術教育 / アファンタジア / NIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に映像的触覚知の生成プロセスの仮説モデルを作成し実験方法のパイロット版を作成した。具体的には中学・高等学校各社の教科美術の教科書等で一般的な映像の拡大・縮小、カラーグレーディング等の映像の操作を主眼点に「写真のカラー化」を実験モデルに設定した。写真のカラー化による操作がどのように映像的触覚知の形成に貢献するのか島津製作所のNIRSを用いて脳活動を計測した。被験者1名(21歳、大学生)を用意しAdobe Photoshopで2枚のモノクロ写真に色彩を復元する表現を3日間(合計6 時間程度の作業)行い、その後暗室で作業した写真を織り交ぜた15種類の静止画を安静な状態で視認し、その際の脳活動をNIRSで測定した。計測ターゲットは各部位の触覚信号を体性感覚として統合する頭頂葉のブロードマンエリア5(BA5)と、体性感覚と視覚入力を統合するブロードマンエリア7(BA7)とした。計測の結果、作業をおこなったターゲット画像を視聴中に顕著なOxyHbの変化が確認された。つまりは映像を操作する活動は、視覚刺激のみでもBA5とBA7を賦活する傾向があることが示唆される。今後さらに複数人での追試験を行う必要があるが、本結果は美術教育であつかう映像を操作する経験が、画像を知覚する際に触覚的刺激を誘発し体性感覚を含めて高いリアリティをもって認知させる可能性を示している。この発見は、普通教育で芸術教育が映像メディア/メディアアートを教える合理的な根拠として提言可能である。また、近年では脳内で映像を想起することができないAphantasiaが報告されており、美術教育研究上そうした現象も合わせて映像的触覚知のあり方を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画である実験方法を仮テストとして行い、先行研究でも認められているがNIRS で計測した際に映像的触覚知が確かに脳機能として備わっている事がわかった。さらに本研究では美術教育における映像を操作する活動がそれらを強調することを示唆している。よって当初計画に従い2021年度の調査に向けて順調に進展できると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
第2フェーズでは、徳島大学の授業受講学生に対してNIRSを用いて脳の触覚野が制作プロセスを行う際にどのように刺激を受けるのか、また制作プロセスを終えた後の映像視聴でどの程度映像的触覚知を形成するのか複数人の実験対象者で検証する。実験デザインを精査するとともに、さらに半構造化インタビューによる発話分析調査によって映像的触覚知がどのような質のリアリティーを形成し、特異な感性の発現に寄与するのか検討を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックにより、国際学会等への旅費が発生しなかった事にくわえ、NIRSによる実験を依頼先のご厚意で無償で行えたことによる。次年度研究費(人件費および物品費)と合わせて使用する計画である。
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Research Products
(4 results)