2021 Fiscal Year Research-status Report
「探究的な学習」を組織するために必要な資質・能力を育む教員養成型対話的実践の開発
Project/Area Number |
20K14015
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
前原 裕樹 三重大学, 教育学部, 准教授 (00755902)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 探究的な学習 / 教員養成型対話的実践 / 観 / リフレクション / ジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、教員養成段階において、教師を目指す学生が「総合的・探究的な学習」を構想することができる資質・能力を育むための実践開発研究として、以下3つを目的としている。 第1に、「総合的・探究的な学習」を実践するにあたり、教師として必要な資質・能力および実践の核となる教師の「観」(授業観等の多様な観の集合体。授業要素に一貫性を与えるもの)を明らかにする。第2に、被教育経験の中で、教師を目指す学生が「総合的・探究的な学習」に関して、どのような「観」を形成しているのかを明らかにする。第3に、学生の発達段階に応じた「深い学び」のある探究的な学習実践を開発することを目的としている。このうち、2年目の本年(令和3年度)は、以下の3点を行い、以下の成果を得た。 1)学生の「観」の変容に働きかける教育実践研究の到達点と課題を整理・分析した。その結果、到達点として、変容しやすい『観』と変容しにくい『観』の存在の指摘されていること、が明らかになった。また、課題として『観』の変容を促したり、捉えたりするための理論的な枠組みが十分に示されていないこと、および『観』の変容に至る契機や変容を促すための要件の検討が十分になされていないこと、が明らかになった。2)学生の「観」の変容を促す契機に関し、リフレクション理論の観点からその要因について明らかにした。その結果、「ジレンマ」を生起させることやその「ジレンマ」を自覚できることが必要となるが、自己内対話をともなうジレンマ状況に至るためには、「自分のフレーム分析がその前提として必要であること、が明らかになった。、3)「対話型論証」をベースとして、世界共通の学力テストに関する教材および単元を開発し、それらを実際に教員養成課程における学生に対して試行した。その結果、一定程度学生の認識の変容を促すことが実証された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特に教材およびカリキュラム開発に関する研究成果として、令和4年3月に、前原裕樹「教育課程論」下村智子・中西良文編『多様なPBLの実践事例と7-stepからの学習過程の検討』三惠社、総5頁 pp.90-95、査読なし、を公表した。 また、学生の『観』に関する理論編として、令和4年2月に前原裕樹「『観』の変容を促す実践研究の概観-教員養成課程における対話的カリキュラムの開発に向けて-」『三重大学教職大学院論集』三重大学教職大学院、第4号、総7頁(pp.67-73)、査読なし、を公表した。さらに、第28回大学教育研究フォーラムにおいて、オンラインで発表を行なった。 ただ、コロナウィルス感染の拡大により、訪問調査および対面での授業実践については実施できなかったが、研究会や学会などをオンラインで実施することに よって、一定程度の研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」と「現在までの進捗状況」に示したように、3年間の研究の2年目を終えて、研究は計画に沿って進めることができたが、やや遅れてい る。特に課題となっているのは、実施したカリキュラムカリキュラムによって、学生の有している「観」がどのように変化するのか、をコンセプトマップによって明らかににすることが、今後の課題である。 令和5年度は、研究の3年目として、上記に述べた各課題に取り組むとともに、重要となる概念の理論研究、新たな単元の開発やコンセプトマップの分析方法の確立など行なった上で公表し、第三者による検証作業を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が301,674円になっているその最も大きな要因は、令和2および3年度の旅費支出額が0になったことにある。それはコロナウィルス感染症拡大によって、予定していた研究調査と学会等での研究成果発表及び研究打合せを、すべてオンラインで行ったことによる。また「その他」の支出で、対面授業やインタビューを実施できずに記録を取れなかったために、予定していたデータ起こし料などが発生しなかったことも要因になっている。 令和4年度は、助成金30万円を合わせて60万円あまりの使用を計画している。計画当初予定していたのは、物品費=15万円、旅費=9万円、人件費・謝金=4万円、その他(印刷費等)=2万円、計30万円である。それらに加えて、文献資料、教材の作成、データ収集などに必要な物品15万円、前年度に実施できなかった対面での調査研究旅費6万円と、授業記録テープ起こし料=5万円、消耗品=41,674円、合計301,674円の支出を予定している。
|
Research Products
(3 results)